円、米ドルがともに大幅な売り越し
円と米ドルがともに大きく売られるといった比較的珍しい組み合わせが続いている。ヘッジファンドなどの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは4月以降5万枚前後の売り越しが続いている(図表1参照)。そういった中で、一時縮小していた米ドルの売り越しが、拡大を再開し、最近にかけて10万枚を上回ってきた(図表2参照)。
主要通貨同士の円と米ドルが、こんなふうにともに比較的大幅な売り越しの状況が続くのはあまりない。円が売られる場合は、基本的には米ドルは買われ、その逆に円が買われる場合は、米ドルは売られるといった組み合わせが普通。
その意味では「異例」ともいえるこのような円と米ドルの「同時売り」は、基本的には株高、リスクオン局面で起こりやすいと考えられる。主要通貨の円と米ドルは、リスクオフ局面では買われる「安全資産」との位置付けが基本だけに、逆のリスクオン局面では売られやすい。
このように円と米ドルがともに売られる結果、円、米ドル以外の外貨が買われることから、リスクオン局面では米ドル以外の外貨の対円相場であるクロス円相場が上昇しやすい。最近の場合も、基本的にはそんなリスクオン局面における円と米ドルの「同時安」、そしてその裏返しとしてのクロス円の上昇相場が展開しているということだろう。ではこれはいつまで続き、どのように終わるだろうか。
円と米ドルがともに大きく売られる状況が続いたのは、比較的最近では2018年2月にかけても見られた。この時の「同時売り」は、同年1月下旬にNYダウなど米国株の上昇が一段落し、急落に向かう中で起きた(図表3参照)。
株が急落に向かう中で、まず売りが止まったのは円の方だった。円の売り越し拡大は同年2月初めには一巡し、その後は売り越しが急縮小に向かった。一方、米ドルは売り越し拡大が3月にかけて続くところとなった。
このように2018年のケースでは、株価が急落に向かう、つまりリスクオフに急転換する中で、まずは円について買い戻しが急拡大し、一方米ドルは売り越し傾向がなお続くところとなった。この結果、為替相場では米ドル/円が急落に向かうところとなったわけだ(図表4参照)。
以上のように、リスクオン局面で起こることのある円と米ドルの「同時売り」は、リスクオフへの急転換で終わりを迎え、まずは円の買い戻しが急拡大する一方、米ドル売りはなおしばらく続くことから、為替相場では米ドル/円が急落に向かうパターンが基本だった。その意味では、今回の場合もまずは株安、リスクオフへの急転換が、円と米ドル「同時売り」転換の目安となりそうだ。