米ドル/円 日足 

週間予想レンジ:109.50~111.00

メインストラテジー:押し目買い

・米長期金利と連動高
・メイン支持確認済み
・円安モメンタム再開

【図表1】米ドル/円(日足)
出所:筆者作成

アナリシス:

米ドル/円相場は先週大きく続伸、5月12日高値の109.79円のブレイクをもって上昇モメンタムの再開を示唆した。先々週安値を一旦下回った後大きく切り返し、110円台前半を一旦トライし、また大陽線で大引けしただけに、メイン支持ラインの再確認、また保ち合いからの上放れに成功したと見ている。上昇モメンタムの再開で今週は上値トライがしやすく、年初来高値の更新があってもおかしくないだろう。

繰り返し指摘してきたように、メイン支持ラインは、年初来安値から維持されてきただけに、米ドル/円のメイン構造に変わりがなく、保ち合いがあってもスピード調整の一環と見なされ、米ドル全面安のなか、対円だけ強気変動構造が維持されている。円は主要外貨のうち最弱であり、4月から米ドル全体が大きく反落、また一旦2月安値を割り込んでいたにも関わらず、米ドル対円は強気変動を維持、主要クロス円の軒並み高値更新もあって、円の地盤沈下が目立つことから、円全体のベアトレンドは安易に修正されないだろう。

そもそも4月に入ってからの反落は、調整小波として見なされており、終値でみれば、年初来上昇幅に対して38.2%反落の範囲に留まり、許容範囲に収まったところも大きかった。スピード調整の一環として許容範囲内なので、切り返し自体もメイントレンドへの復帰とみなし、先週の続伸でブルトレンドを加速する兆しを再度露呈した。

5月12日の大陽線、米消費者物価指数(CPI)の急伸につられた値動きとされるが、同日米ドル/円の上昇幅が明らかに米ドル全体(ドル指数)より大きいため、米ドルが反発する場合、円売りが一番仕掛けやすかった側面を物語っている。先々週の保ち合いでは、一旦12日安値に迫ったものの、下値限定で従来の役割を維持したため、あくまでレンジ内の調整と位置付けたのも正解であり、5月27日の急伸、上放れの蓋然性を示したとみている。

米長期金利の上昇で米ドル買いにつながったと解釈されているが、そもそも最近米サイドの材料、ファンダメンタルズ上の好材料なら米ドル売り、逆に悪材料なら米ドル買いのきっかけになりやすい傾向にあり、これは金融相場の継続や米連邦準備制度(FRB)の政策に関する思惑が市場センチメントを支配し、金利の動向により敏感になっていることを示唆している。一方、材料に基づく米ドル買い時の値幅は、明らかに米ドル売り時の値幅より大きく、内部構造の堅調を示しているので、先週の切り返しや続伸は当然の成り行きだろう。

もっとも、調整波の一旦完成も下値余地の限定を示唆している。繰り返し指摘してきたように、年初来の上昇波が加速され、また8円を超えた上昇値幅を達成してきた分、調整自体がむしろ歓迎される値動きがあり、調整があったほうがより健全な上昇波の形成につながるため、ブルトレンドへの復帰がすでに始まっているなら、年初来高値の再更新を果たすだろう。米ドル全体(ドル指数)の動向も重要ではあるが、円の弱さが目立つ現時点では、米ドル全体の値動きはあくまで二の次ではないだろうか。

何しろ、主要クロス円における円売りのトレンドを維持しており、またユーロ/円など主要クロス円の高値更新が円売りの流れを証拠付けており、円全体の弱気変動を構造化させる存在だからだ。そのため、円全体の一段売り込みで、米ドル/円の上昇がリードすることは間違いないだろう。

より長いスパンでは、年初来の続伸は、2015年高値から引かれてきた抵抗ラインのブレイクを示し、2015年高値から形成された大型トライアングル型の保ち合いが非常に長い歳月がかかっただけに、ブレイクを果たした後の上昇トレンドが大型化されていく公算が大きく、メインシナリオとして維持されている。上昇モメンタムが再開された分、早晩コロナショック後の高値だった111.72円が射程圏に入り、その後2020年高値の112.22円の再更新を果たすだろう。ロングスタンスを継続し、押し目待ちに大した押し目なし、といったリスクも覚悟しておきたい。

豪ドル/円 日足

週間予想レンジ:84.50~87.50

メインストラテジー:押し目買い

・底固く推移も勢い欠如
・内部構造堅調でブル志向
・豪ドル/米ドル次第の公算

【図表2】豪ドル/円(日足)
出所:筆者作成

アナリシス:

豪ドル/円相場は先週小幅反騰、高値圏における保ち合いの先行を示唆した。値幅限定だったものの、意味合いとして軽視すべきではなく、ブル志向継続の一環とみなしている。もっとも、5月10日に一旦高値を再更新してから反落し、その後先週安値83.97円まで続いたものの、先週の切り返しで下値限定を証拠付け、高値圏での保ち合いの一環として内部構造の堅調を示唆した。

繰り返し指摘してきたように、84円関門前後の支持を維持できるかどうかは重要であり、維持できればメイン構造や基本的な見方は変わらない。先週週明けからわずかに84円関門を下回ったものの、その後一環して切り返しを展開し、ブル構造を一段と強化すれば、上放れの後ずれがあっても早晩上値トライを果たす公算が大きい。

先日述べたように、3月末安値からの続伸、4月20日高値のブレイクをもって上昇波の再開を示唆した。これは言ってみれば、4月20日の罫線が示した「強気リバーサル&アウトサイド」のサインが「ダマシ」であったこと、ならびにブル構造も証明されたことで、これから紆余曲折があってもブルトレンドの一段延長につながるとみている。この意味では、先週の値動きは限定だったものの、重要なサインを示していたと言える。

2月高値85.48円に対する一旦更新は、2月高値から形成された一旦「頭打ち」を示唆するフォーメーションの可能性を否定し、大型「ダマシ」の否定でブルトレンドへ復帰するのみでなく、上昇モメンタムの一段加速を示唆した。しかし、その後の反落で高値圏での保ち合いや再調整が進み、先週の値動きをもって再度底打ちを確認したとみている。

大事なことは、5月10日の高値更新自体、一時的に留まったものの、軽視すべきではないサインであった。なにしろ、そもそも3月の一旦高値更新、2月高値を超えたものの、一転して反落し、陰線で大引けしたことで高値更新自体の「ダマシ」の可能性も示唆していたからだ。同サインを重視する形で、高値圏での保ち合い自体を軟調サインの1つとみなし、高値を追うというスタンスに距離を置いてきた。3月の続伸や高値更新は、結局一旦失敗した形となり、モメンタムの低下や保ち合いの先行を強く暗示していたため、4月20日の「強気リバーサル&アウトサイド」のサインが有効ではないかと思われた経緯があった。

しかし、その後同日に高値84.76円のブレイク自体が、大きなサインとして鮮明化した。要するに、同日罫線が示した意味合いが「ダマシ」となり、前記見方を否定する上で、かえって上昇トレンドの土台を作り、メイントレンドとしてのブル構造を強化している。言ってみれば、3月高値から時間をかけて高値圏での保ち合いを形成し、4月20日高値の更新をもって同保ち合いの上放れを示し、コロナショック後安値を起点とした上昇波の加速を示唆していた。そのため、その後の高値更新を当然の成り行きとみなしたわけだ。その反落を、高値更新後のスピード調整と見なし、先週の切り返しで許容範囲内に留まったのみではなく、調整的な値動きの終焉を示唆したとみている。

テクニカルの視点では、「ダマシ」があったほうがより確率を上げ、また蓋然性が高まるとされ、3月高値からの値動きを結局高値圏での保ち合いと見なしたほうが整合性があると考える。さらに、3月にて2月高値に対する一旦高値を更新し、一旦失敗したようにみえたのも保ち合いの一環として解釈されやすいため、先週の切り返しをもって元「トライアングル」の上放れを果たした後、元抵抗ラインの延長線に再打診することで、また支持を再確認できたところも大きなサインと見られ、内部構造の堅実さを示唆していた。

2月高値からの保ち合い自体を「トライアングル」というフォーメーションとみなすため、高値更新をもって上値を追う環境に恵まれた。3月高値からの最大調整幅は約3円なので、その値幅をそのまま上乗せして計算すれば、88円台前半のターゲットを得られるから、しばらくは上昇余地を拡大しやすく、先週の切り返しの続きで、豪ドル/米ドルの値動き次第では、また再度高値を追う展開になると想定される。

要するに、3月高値の一旦更新や失敗したようにみえたのも一種の「ダマシ」のサインであり、高値圏での保ち合いの蓋然性が証明された以上、上値トライまたは高値再更新をもって抑えられた上昇モメンタムの再開や一段強化が有力視されるだろう。先週安値までの続落があったからこそ、今後再度高値トライがあれば、一段とモメンタムの加速につながりやすいのではないだろうか。米ドル/円のブルトレンドへの復帰がみられる以上、豪ドル/米ドルの値動き次第、といった側面が大きいが、対円のメイントレンドが容易に修正されにくく、高値更新必至とみている。上昇モメンタムの強化は、むしろこれからだろうか。