先週は「会社員の年金」について書きましたが、読者の方からひとつご指摘がありました。新入社員の方などは『今の年金制度においては、65歳になるまで一円も公的年金はもらえません』という表現をしたのですが、この公的年金、正しくは「老齢年金」です。
年金=老後にもらえるもの、とイメージされる方が多いこともあり、正確な表記をしなかったのですが、実際には公的年金には障害年金や遺族年金といった種類もあり、これらは要件を満たせば65歳前に受給することも可能ですので、誤解を招く表現であったと思います。失礼いたしました。
さて、前回ちょっと触れましたが、今日は確定拠出年金制度についてお話します。
皆様がよく目にする年金制度は将来受け取る金額が決められている=確定給付型のものです。将来その給付金を得るため、長期間の期待運用率(予定利率)から掛け金(拠出金)も決まっています。お金を預かって運用する側(年金運用者、生命保険会社等)はその予定利率以下の運用成果しか挙げられないと「逆ザヤ」になってしまい、この10年以上に及ぶ超低金利は多くの運用者を打撃し、経営の危機に瀕した会社もありました。
これに対し確定拠出年金制度は手前の掛け金(=拠出金)は決まっていますが、実際に老後に受け取る金額は確定していません。というのも、年金原資を運用するのは、加入者自身で、その運用成果が受け取り年金額となるからです。拠出金が決まっているので、確定拠出年金と言い、2001年10月に公的年金の上乗せ部分として登場した、まだ新しい年金制度です。
確定拠出年金には企業型と個人型の2種類があり、同時に両方に加入することはできません。先週お話したのは、企業が企業年金として採用する企業型のほうです。
企業型への加入は所属企業の導入決定によるもので、企業が従業員の年金の上乗せ分として掛け金を払ってくれます。確定拠出年金専用口座に支払われた掛け金は、原則引き出すことはできず、従業員が自ら運用商品(決められた運用商品のリストの中から選択)を選んで運用します。
個人型は自分で自分の将来のために掛け金を払って積み立てていきます。個人型といっても誰でも加入できるわけではなく、確定拠出年金企業型を含む企業年金のある企業に勤務している方、公務員、農業者年金に加入している方、専業主婦、国民年金の保険料免除をしてもらっている方などは加入を認められていません。
個人型の場合、掛け金は自分で拠出しますが、掛け金は全額所得控除の対象になり、運用中の税金がかからなかったり、受給時にも優遇措置があります。
企業型、個人型、いずれの場合も共通しているのは、加入者が自分で運用商品を選択する必要があることです。
特に企業型に加入される場合に当てはまりますが、(個人型に自ら加入される方は状況を理解してから加入されているはずなので、)これまで投資・運用といったことと無縁でいらした方も、自らの意思と関わりなく、突然「運用」と向き合わなければならなくなります。そしてその成果は自分自身の老後の生活に直接関わるという重大なものなのです!
こうして半ば強引に個人投資家の一員に組み入れられてしまう方もいるわけですが、ぜひ「これは素晴らしいチャンスである」と捉えていただきたいと思います。
預金だけでは間に合わない、何とかしなければ・・・と頭でわかっていてもなかなか運用を始められない方も、こうして強制的に商品を選択するということで運用に馴染んでいかれることもよいのではないでしょうか。
実際、会社が確定拠出年金制度を導入したため、生まれて初めて投資信託を購入し、思いのほかの成果を挙げたため、投資に興味をもち、預金のみだった自分のお金の運用を始めたという方もいらっしゃいます。
老後の準備は早ければ、早いほど効果があります。その準備の中でも最も効率的なのが、上手に資産運用をしていくことなのです。長期的視野にたった分散投資。
年金についての理解を深めることも、運用を始めるきっかけになりますね。-----
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