ここのところ、年金のお話ばかりしておりますが、ご容赦くださいませ。
企業年金として導入されている確定拠出年金についての実態調査
(2006/10/06企業年金連合会)を見ていて、いくつか気になった点があります。
DCを導入するにあたって、多くの企業が設定する想定利回りの平均は2.26%とあります。確定拠出年金を運用するのは加入者=従業員ですから、従業員は平均的にこのくらいの利回りで運用するだろう、という企業側の予想です。 別の言い方をすれば、これまでの年金制度と置き換えて、従業員にとって遜色ないであろう年金額にするためには、この想定利回りを超える運用を目指していく必要がるということです。

基本的な確定拠出年金企業型の仕組みですが、企業は従業員に対し、一定の資金を拠出します。導入時に他の制度からある程度のまとまった資金が移管されることがありますが、通常は毎月定額で拠出・積み立てられていきます。従業員はこの資金を決められた選択肢(運用商品〕の中から商品を選択、自由に配分して運用します。
前述の調査によれば、選択肢としての運用商品は平均で14.76本あり、その中身は元本確保型商品(預金型、生損保型)、投資信託(日本株、バランス型が多く、次いで、外国株式、外国債券、日本債券型)に分けられます。

それでは実際の従業員の運用状況についてです。
以下積立て運用中の資産を「資産残高」、月々会社が従業員のために拠出している資金を「掛金」と呼びます。
             元本確保型    投資信託
資産残高ベース   56.98%     43.02%

掛金ベース      53.93%     46.07%

資産残高ベースも掛金ベースも導入時に比較すると投資信託の比率が徐々に増えてきていることは調査結果にもあるのですが、いずれにせよ元本確保型の比率が5割を超えています。

ちなみに確定拠出年金導入の先輩格である米国での投資残高ですが、2004年のもので、株式+外国株式+ハイブリッド(バランス型)への投資が85%程度、債券型+MMFで15%程度となっており、日本に比べるとかなりリスク選好型ですね。

日本の場合、投資未経験のまま、確定拠出年金制度と向き合った方の多くが、価格変動リスクを極端に恐れることはまま、あります。また、たくさんの商品から選べと言われてもよくわからないので、とりあえず預金、という選択をする方も多いようです。元本確保型が多い理由はそのあたりにあるのでしょう。 「元本確保型」「投資信託」というざっくりとした分け型なので詳細は不明ですが、リスクが比較的小さいと紹介される日本債券型投信の比率も案外高いかもしれませんね。
となると、果たして企業側が想定している利回りを達成できるのかどうか、微妙なところかもしれません。単純に元本確保型の利回りを0.1%、投資信託の利回りを5%とおいて計算すると資産残高ベースで2.16%の利回りです。 もちろん、長い目でみれば、元本確保型もこの超低金利状態から脱することになるとは思いますし、株式投信の割合が多ければ平均利回りはもっと高く想定できるでしょう。

制度が始まってまだ6年しか経っていませんから、利回りについてコメントするのは時期尚早だとは思いますが、確定拠出年金を導入している企業にお勤めの方は、将来自分の受け取る年金のことですから、「面倒くさい」「よくわからない」で放置してしまうと全て自分に戻ってくるものとして意識する必要があります。
もちろん確定拠出年金個人型に加入している方も同様です。「加入する」という行為だけで安心してしまってはいけないのが、この制度です。

ちなみに確定拠出年金がその方の資産の全てではなく一部分に過ぎないはずですから、確定拠出年金の資産残高だけを意識してアセットアロケーションしても、その他の資産は手付かずでは効果はほんのわずかです。
確定拠出年金部分も(これは通常の個人年金も同様ですが)含めた全資産のアセットアロケーションだということを再認識してくださいね。