先週、先々週と個人の関わるお金のマネジメント[殖やす][借りる][備える]の3つの内、[殖やす][借りる]についてお話してきました。今週は[備える]についてお話します。
[備える]といえば、日本人に最も馴染みのあるのが保険です。
日本人の保険好きは世界的にも群を抜いていて、平成16年度(財)生命保険文化センターの調査によれば男性で79.5%、女性で76.6%の人が生命保険に加入しています。(個人年金等は除いています。含めればもっと数字は上がります!)これでもバブルがはじけ、保険会社が破綻することを目の当たりしてから減ってきた数字で、バブル期には男性は80%以上の加入率がありました。ちなみに女性に限って言えば実は年々少しずつ増えてきており、自分の名義で保険に加入する女性が増えていることを物語っています。
さて、こうした国民の8割前後が加入している状況というのは、先進国で公的医療保障や公的年金などのシステムが(かなり先行き不安な状態ではあるにしろ)整っている国にしては際立っているといえます。
[殖やす]のときにも触れましたが、日本人はリスクに対しかなり保守的であり、[殖やす]には預貯金、万が一に備えて保険というのが、多くの人にとって定番だったのです。
さて、本当に[備え]のための保険はそれほど多くの方に必要なのでしょうか?上記の保険には個人年金は含まれていません。つまり老後の[備え]ではなく、基本は死亡したときに対する備えとなります。国民の8割もの人が、自分が死んだときに経済的に困る人がいる、と判断しているのでしょうか?
実はあまり深く保険の内容を考えずに、周囲(親であったり、会社の人であったり)保険くらい加入しているのが一人前の社会人とばかりに、または付き合いなどで加入してしまっている人が多くいらっしゃいます。
独身の女性で両親も経済的に困っていないのに、死亡保障を何千万円もかけて、毎年高額な保険料を払っているケースも珍しいことではありません。皆さんはご自分の加入している保険の種類、ご存知でしょうか?
ゼロ金利が続き、収入が伸び悩み、利息も稼げない、その上保険会社も破綻してしまう!という状況になって、多くの人がこの「保険の見直し」を行うようになりました。「無駄な保険料を削る」という家計の節約という意味も大きいのです。無駄な保険に対し高額な保険料を払い続けているとしたら、それは確かに無駄な出費であり、見直しをすべきところです。
長々と前置きしてきましたが、実はここでも注意すべき点の一つが「金利」なのです。
保険料というのは保険会社が何となく決めているものではなく、将来支払うべき保険金を予定利率という金利を用いて現在に割り戻したものなのです。 予定利率というのは簡単にいえば「加入者が納めた保険料を実際保険金として支払うときまでに保険会社がどれくらいで運用できるか」という見積もり水準のことです。
予定利率も金利であるからには世の中の金利水準の影響を受けるものです。つまりバブル期までのように金利の高かったときには予定利率も高く、それは例えば今の非常に低い予定利率時に、同じ保険金額の同じ保険に(同じ年齢の人が)加入するための支払う保険料に比べると保険料がずっと安く済んでいたことを意味します。
無駄な保険に加入している、と思っても、とりあえずすぐに現金を必要としないような場合は、解約したところで結局その現金(返戻金)を超低金利で預貯金するだけになってしまいます。もしその保険が予定利率の高い時期(5%や6%)に加入した保険(これを「お宝保険」と呼んだりします)のものであれば、そして魅力的な投資先がないのであれば、わざわざ解約しないでそのまま様子を見て、少なくとも1%より高い利回り(保険商品は様々なコストがかかるため、5%や6%の予定利率でも、そのままその数字が利回りを意味するものではありません。)を得ることも選択肢の一つとなりえます。
ゼロ金利政策が解除され、徐々に世の中の金利の上昇が見込まれます。株式市場も回復してくれば、それは充分に魅力的な金融商品が現れ始めることを意味します。必要のない保険に加入している場合はどうすべきでしょう?まだ様子見をすべき?
解約して上昇してきた金利とはいえ、せいぜい1%程度の定期預金に入れるつもりであれば、もうしばらく様子を見たほうが良いでしょう。
でも株式や投資信託でこれからの展望に期待して投資をしたい、というのであれば、必要のない保険に固執することはありません。解約して資金をつくり、その上で投資活動を行えばよいのです。
ただし、保険を解約するときは以下の点に気をつけてください。本当に必要ないのか、再度チェックしてください。一度解約すると健康状態その他の理由で再加入できないこともありえます。
それで解約することを決めた場合、次の順番で行ってください。まず加入時期が異なり(予定利率が違う)、いくつかの保険会社の保険に複数加入しているような場合、まずは信用度(安全度)の低い保険会社のもの(保険は長い付き合いになる金融商品なので、破綻の可能性が高いところとはお付き合いするのは止めるに越したことはありません!)、そして低予定利率のものから解約するようにしてください。
「お宝保険」から解約することのないようにしてくださいね。