米国株に2月の調整はあるのか?

米国では歴史的に2月は株価が弱含む月となっています。私も1月のイベントではそのことを紹介し、その可能性を信じていました。ところが最近の米国株式市場を取り巻く環境をみると、2月に調整が起きない可能性が出てきたのではないかと思い始めています。

「調整が起きない」と考えられる理由

その理由は大きく2つあります。

1つは、大統領、上院、下院すべてを民主党が制した「ブルーウェーブ」の新体制下において、バイデン米大統領が提示する1.9兆ドルの経済対策案を、その金額に近い形で実行できる可能性が高くなってきていることです。

2020年の米国のGDPは21兆ドルと言われていますので、もし上記が実現すればGDPの10%に相当する資金が経済に流れ込むことになります。

株式市場は経済で起きることを先読みするメカニズムがあります。1.9兆ドル、もしくは1.9兆ドルに近い経済対策が実現するという報道が流れることになれば、株式市場はポジティブに反応することになるでしょう。

もう1つの理由ですが、「ゲームストップ(GME)事件」は世界最大の株式市場で起きた出来事の1つとして非常に話題を集め、世界中の投資家の注目を浴びた事件でした。これは米国の株式市場という世界を代表する資本主義国の市場で、今まで独占的に空売りで利益を得ていたヘッジファンドに対し、SNSを活用したミレニアル世代の若者たちが挑戦を挑み、勝利を得た結果となったのです。

この戦いの中で、数十を超えるヘッジファンドが運用しているファンドのパフォーマンスが1週間で10~15%下落したと言われています。これは株式市場の歴史においても前代未聞の状況のようです。

株式市場の関係者からは、「このような事態は本来2月に起きるはずの株式市場の調整にとって代わるものであり、株価の調整は既に起きたものと理解して良いのではないか」との意見も聞かれます。

さらに、事前予想では前年同期比で減益になると見られていた2020年第4四半期の決算発表についても、S&P500指数採用銘柄のうち293社が発表を終えており、全体的には前年同期比で3.6%の増益と回復基調にあるという結果となっています。

したがって、この様な状況下において株価の調整は起き難いのではないか、ということなのです。

注意すべきリスク

ただし、リスク要因として、トランプ前米大統領の弾劾裁判の行方というものがあります。トランプ氏の側近によると、同氏は「裁判までは静かにしている」と語っているとのことです。

基本的には株式市場に与える影響は限定的だと思われますが、裁判の進展に関する報道が、市場にネガティブな影響を与えることがあるかもしれません。これはトランプ氏の発言、そして発言に対して、米国議会に乱入したようなトランプ支持者の一部の反応次第ということです。