みなさん、こんにちは。2021年を無事に迎えることができました。本年もよろしくお願いいたします。

丑年の相場格言は「つまずき」だそうです。あまりうれしくない格言ですが、つまずくことのないよう備えておけ、ということだと前向きに受け止めたいと思います。

折しも、年初早々、1都3県を対象に緊急事態宣言が再発令されることになりました。これも1つのつまずきかもしれません。

まずはご自身とご家族の健康と安全が最優先であることは言うまでもありません。健康第一でまいりましょう。

「5G」の展開の見通し

さて、今回のコラムでは高速通信規格「5G」の今後の展開をテーマに取り上げてみたいと思います。5Gサービスについては既に2018年3月5日付コラムで取り上げていますが、この時は大きな流れを中心にやや長期スパンの投資テーマとして解説しました。

2020年春に実際に5Gサービスがスタートし、同年秋にかけて5G対応のスマートフォンの発売が相次いだことを受け、今回はもう少し短期的な目線でその展開を考察してみましょう。

ところで、読者の中で5Gサービスのメリットを既に享受しているという方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか。まだほとんどいらっしゃらないように思います。

多くの方は既にお気づきの通り、日々の携帯電話通信において(5G対応機種であっても)5Gに接続されるケースは、まだほとんどありません。通信キャリアは5Gシステムの利用地域を拡げている途上にあり、全国津々浦々まで5Gサービスが網羅されるまでには、まだしばらく時間がかかるというのが実態なのです。

5Gサービスによる通信の高速大容量化は間違いなく我々消費者に新たなスマートフォンの使い方を提供することになるでしょう。しかし、そのような新たなサービスを実感できるのはネットワークインフラの整備がある程度進んでからになると考えられます。

「5G」銘柄選択の注意ポイントは?

とはいえ、株式市場では期待が前倒しで株価に織り込まれていきます。ここで重要なのは、その場合の株価を先導するのが理論・理念・イメージ・ストーリー・技術などであり、実態はそこからかなり遅れる場合もあるということです。

そもそも何が本当に我々の生活を劇的に変化させるのかは、実際に現実になったところで初めてわかるものです(これは、弾けて初めてわかるというバブルと同じ構造と言えます)。

したがって、5G導入初期に有望銘柄として取り沙汰される5G関連企業は、実は玉石混交であることをしっかりと認識しておく必要があります。徐々にそれら企業群の中で淘汰が進み、5G時代の真の覇者が浮かび上がってくるというのが現実の流れだと思われます。

株式投資においても、玉石混交である現実を常に意識し、成長シナリオを信じて思考停止になってしまうことがないよう、肝に銘じて臨んでいただきたいところです。最初から「この銘柄が覇者になるのだ」という決め打ちは、かなりのリスクを伴うことになります。

そういった中、筆者が5Gで一番注目しているのはM2M(マシンtoマシン)の世界です。5Gになったとしても、実は人間の処理識別能力に限界があり、当初は思ったほどその高性能のメリットを感じられないかもしれません。

むしろ5G のメリットは極めて正確なオペレーションが要求される機械の分野にこそ、早期に発揮されるのではないかと考えているのです。工場の建物内だけで機械間で機能する「ローカル5G」という使い方が提唱されているのもそのためです。

M2Mでの活用が進めば、工場内の省人化の進展や不良比率の抑制などといった効果も考えられます。

さらに、M2M領域には自動運転を含む高度道路交通システムの強化、遠隔医療システムなども含まれます。このようなモノづくりやモノの制御という分野において、5Gが画期的な変化を巻き起こす可能性を予感させます。

5Gの初期段階においては、まずこの分野での普及に注目したいところです。5Gの導入によって、消費者の社会行動様式の変化にまで進化するのは、おそらくその後になるでしょう。

過去の例を見ても、4Gにおける真骨頂と言える動画配信やクラウドサービスが浸透したのは、やはり4Gが導入されて数年経った後のことでした。

玉石混交の銘柄の手堅い見極め方

このようなアプローチに対し、「玉石混交の銘柄の見極めはどうも面倒だ」という方もおられるでしょう。そういった方には5G設備需要に関連する企業群への投資が手堅い選択となるでしょう。

いかなるサービスが生まれ、いかなる淘汰が進むとしても、インフラである設備(と部品)への需要が、まず発生すると考えられるためです。

ただし、通信キャリアも通信料金値下げなどにより、設備投資原資は今後、急速に抑制される可能性があります。

設備関連企業から見ても、5G専業というケースは稀である以上、業績において5Gの影響もかなり希薄化されてしまうでしょう。つまり、比較的ローリスクとなるのに対し、リターンもまたやや低めになるのではと考えられます。

5Gはリスクとリターンのバランスの取り方によって、かなり投資戦略が変わってきます。是非、そういった観点で5Gを考えてみていただければ、面白いのではないでしょうか。