「合意なき離脱」懸念後退の3つの理由

英ポンド/円は米大統領選挙前までは135円を下回って推移していたが、選挙後大きく反発、一時は140円の大台を回復するところとなった。

そもそも、英ポンドは9月に入ってから、おもに「合意なき離脱(Brexit=英国のEU離脱)」懸念をきっかけとして、一時は133円まで急落したが、ここに来てそんな下落が本格化する前の水準までほぼ戻ってきたわけだ。その理由はおもに3つだと考えている。

1つ目の理由は、貿易協定を巡り英国とEUの合意期待が急浮上したことだろう。一部には来週月曜、23日に両者が合意するとの観測もあるようだ。そうなると、まさに、上述のような9月以降の英ポンド急落再燃のきっかけとなった「合意なき離脱」懸念が消えることになるわけだ。

そして2つ目の理由は、1つ目の理由の影響もあるのか英金利が上昇しているということ。長期金利、英10年債利回りはこんなふうに「合意なき離脱」懸念が再燃し、英ポンドが急落に向かった9月初めの水準を、最近にかけて一時上回る動きとなった。金利の観点からすると、英ポンドは9月初めの141円以上に上昇してもおかしくない感じになってきたわけだ。

そして3つ目の理由は、この金利上昇も、それに連れた英ポンドの上昇も米大統領選挙後から急加速したものだということ。つまり、ボリス・ジョンソン英首相の対EU強硬姿勢は、結果としてトランプ大統領を後ろ盾としたものであり、そんなトランプ大統領の選挙での「敗北」により、ジョンソン首相の強硬姿勢も軟化することで、「合意なき離脱」シナリオは大きく後退、英ポンドもそれに反応したということではないか。

以上のように見ると、米大統領選挙の結果は、これまでのところある意味では米ドル以上に、英ポンドに大きく影響している可能性すらありそうだ。