メキシコペソと南アランド

株高、リスクオンが続く中で、為替市場でリスク資産と位置付けられる新興国通貨も一段高となった。メキシコペソは一時5.2円を上回り、南アフリカランドなどは6.9円近くまで上昇した。ただその中で、さすがに短期的な「上がり過ぎ」懸念も強まっている。

基本的に、新興国通貨は90日MA(移動平均線)を5%以上上回ると短期的な「上がり過ぎ」に要注意となった。ところが、南アランド/円は一時90日MAを8%以上も上回り、足元でも6%以上上回る状況が続いている。また、メキシコペソ/円も、足元で90日MAを5%以上上回っている(図表1、2参照)。

【図表1】南アフリカランド/円の90日MAからのかい離率(2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表2】メキシコペソ/円の90日MAからのかい離率(2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

新興国通貨は、米ドルなど主要通貨に比べてボラティリティーが高いという特徴がある。要するに値動きが荒いということ。このため「上がり過ぎ」の状況から、いざ反落に転じると暴落するリスクが高まる。

それを目の当たりにしたのが3月の「コロナ・ショック」でのメキシコペソの暴落だろう。コロナ・ショック前に6円を記録していたメキシコペソ/円はあっという間に4円台前半まで約3割の暴落となった。

ちなみに、この6円を記録していた時のメキコシペソ/円は、90日MAを5%以上上回っていなかった。それでも、いざリスクオフになると、「上がり過ぎ」気味の反動で一気に暴落に向かったわけだ。

以上のように見ると、新興国通貨の場合は、米ドルなど主要通貨以上に、「上がり過ぎ」圏での買いには慎重な判断が必要だろう。この「上がり過ぎ」の目安を、私は90日MAを5%以上上回った水準としてきた。

そんな観点からすると、すでに述べたように南アランド/円が一時90日MAを8%も上回ったというのは、かなり警戒感の強い動きだった可能性があっただろう。株高が続いているうちはよさそうだが、きっかけが何でも逆流に転じると勢いづいて下落に向かうリスクがあるということは、しっかり認識しておく必要があるのではないか。