米大統領選ではバイデン氏の勝利が確定しました。投開票日から4日後のことです。
激戦区を一つ一つ制覇してきたバイデン氏は、現地時間11月7日時点で279人の選挙人を獲得し、当選に必要な270人のハードルをクリアしました。

6月以降、米国株はバイデン氏の当選を分かっていたかのように動いてきましたが、それがやっと現実となりました。11月7日夜(現地時間)に行われた勝利宣言のスピーチではバイデン氏は、今までに見たことがないような元気さで大統領勝利宣言の演説を行いました。世界的にこの結果に安心した人たちも多かったのではないかと思います。

今回の米大統領選は「トランプ米大統領vs.バイデン氏とメディア」

今回の選挙の結果で誰が一番喜んだかというと、私は米国のメディアではないかと思っています。選挙前のオンライン・セミナーでもお話したのですが、今回の米大統領選でのトランプ米大統領の敵はバイデン氏だけではありませんでした。トランプ米大統領にとって今回の選挙はバイデン氏に加え、米国を代表する新聞やテレビなどのメディアとの闘いでもあったのです。トランプ米大統領は、メディアによる自分に都合の悪い報道を「フェイクニュース」と決めつけ、都合の悪い報道を行うメディアを名指しで非難し続けてきました。ですので、メディアとの関係悪化のきっかけを作ったのはトランプ米大統領本人であったと思います。

4年近くトランプ米大統領による一方的な非難を受けてきた米国のメディアですが、今回の米大統領選では「反トランプ」のスタンスを明確にして選挙の報道を行ってきました。例えば、予定されていた2回目のテレビ討論会の代わりに行われたタウンホール・ミーティングでは、テレビ局のキャスターがトランプ米大統領に対しては厳しい質問を浴びせたのとは対照的に、別の番組でのバイデン氏に対するキャスターからの質問は好意的なものでした。CNNのキャスターも、トランプ米大統領の様々な不正確な発言に対し、我慢がならないという感情を表していました。また、ニューヨークタイムズ紙も、トランプ米大統領を再選させてはだめだという異例の論評を掲載しました。

反トランプのメディアによる報道が、米国民の大統領の選択にそれなりの影響を与えたのは間違いないのではないかと思います。

第3四半期の決算発表は予想を上回った

米大統領選挙の陰に隠れてしまった感がある米国企業の第3四半期の決算発表ですが、既にS&P500企業のうち448社が発表を終えています。83%の企業が事前のEPS予想を上回り、アナリストのコンセンサス予想に対しては平均17%上回る結果を出しています。

決算発表前の9月末時点での収益予想は、前年同期比で22%の減益となる見通しでしたが、実際は8.6%の減益に留まっています。

今後の米国株市場の展開は

さて、今後の米国株市場についてですが、前回の記事でも触れた通り、上院が共和党、下院が民主党というねじれの状況は今後の株式市場には理想的な状況なのです。ねじれた議会は、バイデン氏が公約としている法人税の引き上げ、富裕層への増税を難しくすることになるでしょう。少なくとも次回の議会選挙が行われる2年後までは難しいのではないかと思います。

新政権発足後も中国との政治的な駆け引きは続くわけですが、過去4年間で起きた感情的な貿易戦争には終止符を打つことになるでしょう。バイデン氏は、トランプ米大統領が引き上げた関税を引き下げたいと言っています。これは米国の企業にとっても悪い話ではないとみられています。

フェーズ4の新型コロナウィルス経済対策の規模については、大統領と議会全てが民主党となる予定だったブルーウェーブの場合より小さなものとなるかもしれませんが、経済を軌道に戻すためには十分な大きさのものになると考えられます。バイデン氏のもう1つの公約であるインフラ投資についても同様になると思います。つまり民主党主導型のインフラ投資ではなく、共和党との妥協により合意された形のインフラ投資になるであろうということです。

このような一連の展開は、バイデン政権下における米国株式市場の見通しを明るくするものです。

加えて、以前から何度かお話してきた通り、民主党の大統領の4年間の方が、共和党の大統領の4年間よりも株式市場のパフォーマンスが良かったと言う事実を忘れてはいけません。

2021年のS&P500の目標株価は3,900

S&P500のEPS予想については、2021年が169.9ドルと2020年と比べ22%の増益が見込まれています。2022年のEPSについては196.6ドルと前年比で16%増益となる見通しです。上に述べた今後起こりうる展開と企業業績の伸びを考慮に入れると、2021年末までにS&P500は2022年の予想EPS196.6ドルの20倍の3,900まで買われていくと考えています。

株式市場のリスクとは

株式市場にとってのリスクとは、トランプ米大統領がいつになったら選挙の負けを正式に認めるのかというところでしょうか。選挙結果を見る限りでは、バイデン氏の勝利がひっくり返ると言う事態の展開は考えにくいと思います。トランプ米大統領がやろうとしている最高裁を巻き込む騒ぎにより、株価が下がるようなことになるとするならば、そこは絶好の買いの機会であると考えます。

参考銘柄

今後長期的な投資妙味があると思われる参考銘柄としては、先週述べたアップル(AAPL)、アマゾン(AMZN)、アルファベット(GOOGL)のようなGAFA銘柄に加え、通信のAT&T(T)、銀行のバンク・オブ・アメリカ(BAC)、航空機メーカーのボーイング(BA)、化学メーカーのダウ (DOW)、アフリカのアマゾンと呼ばれるジュミア・テクノロジーズ(JMIA)、ホームセンターのロウズ・カンパニーズ(LOW)、スポーツ用品メーカーのナイキ(NKE)、EV車のテスラ(TSLA)、オンライン不動産会社のジロー(Z)などが挙げられます。
投資を検討される場合は、「時間の分散」をお忘れなく。