◆あっという間に10月である。前回の【新潮流】ではいよいよ秋本番、旅行にはベストシーズンだとしてGoToトラベルの話を書いた。秋と言えば他には何か。秋と言えば「食欲の秋」でGoToイート、ではつまらない。秋と言えば「スポーツの秋」であり「芸術の秋」だ。学校では体育祭と文化祭の季節である。ところが今年はコロナで多くの学校で文化祭が中止になっている - と、思いきや、実際にはオンラインで開催する学校も結構多くあるようだ。娘の学校(中学・高校一貫校)もこの週末にオンラインで文化祭を開催した。

◆関係者限定のパスワードを入力し専用のサイトにログインする。ひと通り閲覧したが、これが実によくできていた。今は簡単にウェブページができるプラットフォームなどがあるとは言え、中高生の制作としては立派であった。僕が親バカなのではなく、考えてみれば彼女らはデジタル・ネイティブ世代だ。そんなことに感心するこちらの感覚が時代遅れなのかもしれない。

◆政府はデジタル庁創設に向け、インターネット上で意見を募る「デジタル改革アイデアボックス」を開設した。平井デジタル改革相は記者会見で「デジタル社会の形やデジタル改革の進め方について、率直な意見やユニークなアイデアを投稿してほしい」と呼び掛けた。きっとデジタル・ネイティブな若い世代から斬新なアイデアが多く集まるだろう。ただ問題はそれを採用する側に、斬新なアイデアを評価する能力とセンスがあるか、である。

◆デジタル化と言えば日米欧の中央銀行がデジタル通貨発行へ共通3原則をまとめたことがニュースになった。日銀も実証実験を2021年度に実施すると発表した。世の中、急速にデジタル化が進む。もちろん良いことなのだろう。しかし、デジタル化やオンラインが普及すればするほど、リアルの熱気が恋しくなるのは、おじさん世代の僕だけだろうか。オンライン文化祭は良かったが、オーケストラ部や軽音楽部の演奏に、ダンス部のパフォーマンスに、演劇部の舞台に、熱い声援と拍手が聞こえないことがなんとも空虚に感じた。

◆オンラインでもパフォーマンスを見せることはできる。次の課題はそれに対するオーディエンスのリアクションをもリアルに近いものにすることだろう。課題さえわかれば必ず解決できる。そう遠くない未来に、オンラインでもリアリティを感じる興奮を参加者全員で共有できるような社会が来るだろう。おじさん世代もそれを熱望してやまない。