公開買付が行われる場合、主に買付価格・買付条件・買付期間が設定されます。このうち、買付価格にプレミアムがつく場合が多いことは、前回の記事でお伝えした通りです。もし自分の保有株式が公開買付の対象になり、そのプレミアムを考慮して株価が上がった場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

せっかく公開買付の対象になったのだから、できるだけうまく売却したいですよね。そこで今回から数回にわたって、保有株式が公開買付の対象になった場合の注意点をまとめてお伝えします。

保有銘柄が公開買付の対象になった場合の売却方法

公開買付の対象になった銘柄を売却する場合、大きく分けて2つの方法が考えられます。1つはその公開買付に応募することです。もう1つはその銘柄を取引所で売却することです。いずれの場合も、まず、公開買付の買付条件を確認することが大事です。今回は取引所で売却する場合の株価の決まり方を見ていきましょう。

取引所で売却する場合、株価はどう決まる?

公開買付の買付者は買付条件として、買付株数の上限と下限を設定します。上限を上回る応募があった場合、応募した株式は按分して買い付けられます。たとえば、30万株の上限に対し、50万株の申し込みがあった場合、応募株数の60%が買い付けられます。この場合、500株を応募した株主は300株を公開買付価格で売却でき、残りの200株は売却できずに戻ってきて、引き続き自分が保有することになります。

ちなみに単元未満で買い付けられることはありませんので、単元が100株の株式で100株応募した場合は100株が買い付けられるか、100株が戻ってくることになります。このような単元未満の端数部分を無視すると、公開買付では応募者の株数は平等に買い付けられます。大株主でも買ってもらえるのは応募株数の60%です。公開買付期間中に応募すれば、早く応募したものも遅く応募したものも平等に取り扱われます。

さて、1,000円だった株式が2,000円で公開買付対象になったとします。買付者がもともと株式を保有しておらず、買付の上限を全株式の60%とした場合、株価はどのようになるでしょうか。

仮に上限がない(すべての応募株式を買う)とすると、買付者が必ず2,000円で買ってくれるわけですから、株価はほぼ2,000円になります。

しかし、上限が60%の場合、応募株数の60%しか買ってもらえない場合があります。たとえば、1,000株応募した場合は、600株は2,000円で買ってもらえるものの、400株が戻ってきます。戻ってくる400株は取引所でもともとの1,000円でしか売れなくなってしまう可能性があります。

そうすると、売却できる600株は2,000円×600株=120万円、戻ってくる400株は1,000円×400株=40万円なので、160万円なら1,000株買っても良さそうです。つまり160万円÷1,000株=1,600円くらいの株価が妥当ということになります。

これらの期待値を考慮し、取引所で売却したほうが有利だと思ったら、取引所で売却するのも1つの方法です。株価形成には他にも様々な要因がありますが、上限が設けられた公開買付の場合と上限のない公開買付の場合では株価が異なってくることに、ご注意いただければと思います。

次に、下限が設けられている場合です。これは公開買付者が一定の株数以上の応募がない場合は、応募された株式を1株も買い付けない、というものです。たとえば、全株式の50%を下限とし、上限を設けないような公開買付が行われた場合を考えてみましょう。この場合、公開買付の全体の応募が50%を超えれば自分が応募した株式はすべて公開買付価格で買われます。一方、全体の応募が50%に届かなかった場合、自分の応募した株式はすべて戻ってきてしまいます。

先ほどの上限の例と同じように、1,000円だった株式に対し、2,000円で公開買付が行われたとします。買付者が下限を設定し、その下限に到達する可能性が50%と見込まれるとします。

そうすると、先ほどの例と同じとすれば、公開買付に応募した場合、50%は2,000円で買ってもらえるものの、下限に到達しなかった場合、応募した株は戻ってきてしまいます。戻った場合の株価を1,000円とすると、2,000円×50%+1,000円×50%で1,500円くらいが取引所での売却の基準になりそうです。

多くの公開買付は応募の見通しを得た上で公開買付を行うため、下限に到達しないことは少ないのですが、敵対的な公開買付では会社側が反対することなどもあって、下限に到達しない場合もあります。

この他にも公開買付について注意すべきことがいくつかあります。それらについては、次回、お伝えしたいと思います。