米ドル全面安の中で例外的だった米ドル/円
米ドル/円の下落が広がってきた。3月、「コロナ・ショック」後に記録した米ドル高値、111.7円からの下落率は、29日までに6%以上に拡大してきた(図表参照)。
【図表】米ドル/円の日足チャート (2020年3月~)
ただ、そもそも対円以外ではさらに米ドル下落が拡大している。「コロナ・ショック」後の米ドル高値からの最大下落率は、対ユーロではほぼ10%に達した。対豪ドルに至っては、すでに20%を大きく上回る下落率となっている。
要するに、「コロナ・ショック」の世界的な株大暴落が一段落した後は、多くの通貨に対して全般的に米ドルは下落しており、その意味では最近の対円での米ドル下落拡大は、いよいよそのような米ドル下落圧力が対円にも波及してきたということが基本ではないか。
「コロナ・ショック」を前後し、米金利は長期金利の指標、10年債利回りでいえば約1%も大幅に低下した。またFRB(米連邦準備制度理事会)の大量の米ドル資金供給により、需給的に米ドル余剰が急拡大した可能性がある。
そのような中では、「コロナ・ショック」後に米ドル全面安となっていることに違和感はない。「コロナ・ショック」後に米ドル/円は方向感の乏しい一進一退が続いたが、むしろそれは例外的だったといえるだろう。
最近になり、米ドル/円も長く続いたもみ合いのレンジを下放れ、さらに重要なチャート上のサポートをブレークしたことで、米ドル下落の圧力が対円にもいよいよ波及してきたということではないか。
それにしても、上述のように対ユーロや対豪ドルと比べると、まだまだ対円での米ドル下落率は小幅にとどまっている。この先、対円での米ドル下落が少なくとも対ユーロ並みに10%程度に拡大するなら100円割れを目指す計算になる。