前回のコラムで「NYダウ平均の日足チャート上にいわゆる「アイランドリバーサル(離れ小島)」のパターンが示現したことも見逃せない事実」と述べました。そして案の定、その弱気転換のサインが示すようにそれ以降のNYダウ平均は調整含みの展開を余儀なくされており、結果として米ドル/円、クロス円も弱含みの展開を余儀なくされています。
先週の米株市場では、ナスダック総合指数も週末にかけて弱含みとなりましたが、同指数に関してはこのところ「少々行き過ぎ」の感があったことも事実です。
よって、ここで改めて見定めたいのは、足下の米株価の値動きが単に一時的な調整に留まるのか、それとも一旦下落トレンドに転じるのかという点でしょう。目下の外国為替相場が基本的に株価睨みの展開を続けていることは、すでにご承知のとおりです。
新型コロナウイルス第2波への警戒は米国市場にどう影響するか
米株価の行方を考えるうえで最も重要視されるのは、やはり新型コロナウイルス感染拡大の第2波に対する警戒が米国市場でどの程度まで高まるかということでしょう。
既知のとおり、最近の米フロリダ州、テキサス州、アリゾナ州における新たな感染者数の増加ぶりは目に余るものとなっています。この3州の州知事がいずれも共和党員であることと、当該州で感染者が目立って増加していることは決して無縁ではないと思われます。なにしろ、党のリーダーであるトランプ米大統領自身がマスクの着用を拒否し続けるなど、今求められているウイルス対策に何かと逆行しているのですから。
このまま具体的な規制措置も講じずに事態を放置すれば、今後も新たな感染者数が日増しに増え続ける公算は大きくなります。そうなれば、一頃まで経済再開への期待感を優先させて一段の上値を追ってきた米株価の行方も楽観視できなくなり、目下のところ選挙戦で劣勢に立たされている現職米大統領の再選への道のりは一層険しくなるものと思われます。
そうでなくとも5月下旬あたりからは、米株高でもトランプ氏の再選確率は下がり続けるといった状況が続いています。むろん、米株価が一段安となった場合には、それこそトランプ氏の再選を遠ざけることとなるでしょう。
トランプ氏による起死回生の政策行動がもたらすもの
ここで注視しておきたいのは、トランプ氏が起死回生を図るべく、なりふり構わぬ政策行動に打って出る可能性が高いということです。実際、目下の米トランプ政権は欧州連合(EU)と英国に対する関税強化を検討しており、場合によっては欧州のみならず中国に対しても一層の圧力をかける可能性があります。
そうなれば、ようやく回復し始めた世界経済の先行きにも暗雲が漂い始めます。また、先にトランプ氏が打ち出した就労ビザの規制強化策にしても、結果的に米国人の雇用確保につながるかは不透明であり、むしろ最終的には米経済回復の妨げとなる恐れも大いにあると見られます。
米経済回復の足取りが先々鈍るとの見通しが優勢になれば、市場では「米連邦準備制度理事会(FRB)がイールドカーブ・コントロールの導入に踏み切る」との思惑が強まり、一時的にも米ドル売り圧力が強まりやすくなる可能性もないわけではありません。同時に世界全体の景気動向に敏感な豪ドルが下げトレンドを描き始めれば、豪ドル/円の下落に連れて正の相関が強い日経平均株価、引いては米ドル/円の下げにもつながりやすくなるでしょう。
目下のところ、豪ドル/円と日経平均株価はともに一目均衡表(日足)の基準線に下値を支えられる格好となっています。よって、目先は同線のサポートが機能し続けるかどうかを見定めることが肝要であると思われます。仮にクリアに下抜けた場合には、米ドル/円が再び106円処の節目を試す展開となる可能性も高まると見ておく必要があるでしょう。