6月1日の日経新聞に日本のアクティビストである「ストラテジックキャピタル」が全面広告を掲載しました。広告の内容はストラテジックキャピタルがウェブサイトに公開されています。ストラテジックキャピタルがアクティビストとして投資する6社への株主提案を説明するものです。ストラテジックキャピタルは過去にもこういう広告を掲載しており、世間にその主張を訴えるタイプのアクティビストです。
これは、現在の多くのアクティビストが目指すところと重なっています。たとえばこの広告の冒頭に掲載されているのは京阪神ビルディング(8818)です。ストラテジックキャピタルは「京阪神ビルディングの株主価値向上に向けて」というウェブサイトを開設するなど、同社へのアクティビスト活動に力を入れています。
しかし、直近の大量保有報告書によればストラテジックキャピタルは同社株を5.5%しか保有していないのです。京阪神ビルディングの筆頭株主は12.1%保有しているのでそれより少数ということになります。当然にストラテジックキャピタルだけでは株主提案を通せません。2019年3月末の京阪神ビルディングの株主は8,518人です。個人投資家が8,191人おり、彼らが全体の14.3%の株式を保有しています。ストラテジックキャピタルはこの個人投資家を含めた他の株主の賛同を得ることで、京阪神ビルディングを動かそうとしています。そのため、こういう広告を掲載するなどして世論を盛り上げようとしているのです。
京阪神ビルディングの2019年の株主総会の結果を見てみると、同社の議決権の個数が約52.7万なのに対し、実際に株主総会で行使された議決権は約44.9万でした。約15%の議決権は行使されていないのです。一般に個人投資家は機関投資家より議決権を行使しない傾向にあります。行使されていない15%と、個人投資家の保有比率14.3%は近い水準です。どれくらいの個人投資家が議決権を行使していないかは不明ですが、そこまで行使されていない可能性が高そうです。ストラテジックキャピタルとしてはそれらの層に議決権を行使してほしいと思うでしょう。
株主総会は選挙に似ています。選挙で選ばれる政治家は注目されればされるほど規律づけられて、より有権者のことを考えます。この数ヶ月ほど政治家に注目が集まった時期はなかったと思います。内閣・国会議員・都道府県の首長などはおそらくその他の政治家の動向を気にしながら意思決定や説明にいつも以上に力を入れたと思います。これは注目している有権者が他の政治家と自然と比較することを意識してのものでしょう。会社経営にもそういう規律が必要なことは間違いないでしょう。株主の方には議決権行使書が届いている時期だと思います。ぜひ、ご確認いただければと思います。
ストラテジックキャピタルが京阪神ビルディングへの大量保有報告書を提出したのは2018年1月でした。その頃900円ほどだった株価は直近では1,500円程度になり70%近い上昇を見せています。同期間の日経平均は少し下げているので、ストラテジックキャピタルの登場が同社の株価への刺激になったことは間違いないように思います。次回は、ストラテジックキャピタルが先ほどの広告でどういう主張を行っているのかを見ていきたいと思います。