米中対立で香港ドルペッグ制度維持へ警戒感浮上

中国・全人代が香港への国家安全法制定導入を決定したことを受け、米国がそれに対する対抗措置として香港への優遇措置廃止の動きに出たことで、香港の通貨制度、香港ドルを米ドルに連動させる米ドルペック制度維持への警戒感も浮上しているという。

米ドルペッグ制度とは、1米ドル=7.75~7.85香港ドルといった極めて狭いレンジでの管理相場。中心レートを決めて、それから±1%程度の範囲で推移するべく管理するものだが、今後米国が香港の銀行による米ドル資金の入手を制限するようなことになった場合、レンジ内での維持管理が困難になるのではないかと懸念されているわけだ。

当面においては、この懸念は杞憂に過ぎないだろう。一定レンジ内での管理維持で米ドル資金が必要なのは、米ドル高・香港ドル安へ米ドル売り介入が必要になる局面だが、「コロナ・ショック」を受けてFRBが金融緩和を積極化し、米金利の大幅な低下が続く中では、金利差は米ドル安・香港ドル高をもたらしやすく、上述のような米ドル売り介入が必要な局面は当面は想定されないだろう。

ただ、中長期的にくすぶる可能性のある問題になるかもしれない。米中対立は、一種の世界的覇権を争うものであり、10年単位の長期戦と考える必要がある。その中で、米金利上昇で米ドル高局面となった時には、香港ドルのペッグ制度維持は、その時の米中関係次第で現実的な危機にさらされる可能性はありうる。

中国において、深圳経済の発展・拡大により、香港の役割に対する期待が徐々に低下傾向にあることの影響も懸念材料かもしれない。以上のように考えると、香港ドルペッグ制度見直しの問題は、短期的には可能性が低いものの、中長期的には注目する必要があるのではないか。

【図表】香港ドル/円の日足チャート(2020年3月~)
出所:マネックストレーダーFX