米ドル/円は1円足らずのレンジで推移
先週5/25以降の国際金融市場では全体にリスク選好のムードが強まり、週間で7%超の上昇を見た日経平均株価をはじめ、NYダウ平均、英FT100指数、独DAX30指数、仏CAC40指数など、主要国の株価指数が軒並み強含みで推移することとなりました。
その結果、所謂「リスク選好の米ドル売り」と称される動きが強まったわけですが、同時に所謂「リスク選好の円売り」と称される動きも強まり、結局のところ米ドル/円は週を通じた値幅が1円足らずという非常に狭いレンジ内での値動きに終始することとなりました。
リスク選好で米株価が強含みで推移したのにもかかわらず、その結果としての「米ドル売り」というのは少々不可解な感じもします。
その点を理解するためには、やはり3月半ば頃に新型コロナウイルスの感染急拡大を受けて米国外で米ドルの需要が急増し、世界で米ドルの調達懸念がパニック的に広まったという出来事を思い起こす必要があるでしょう。
その当時、米連邦準備制度理事会(FRB)はパニックを鎮めるため、かつてないほど柔軟かつ強力に米ドル資金を供給し、その効果は絶大なものとなりました。
結果、頼れるFRBを後ろ盾とする米ドルの覇権があらためて認知されることとなり、足下では所謂「有事の米ドル買い」、「何かあったときの米ドル頼み」といった考え方が市場で広く共有されるようになっているわけです。
したがって、先週のように世界同時株高でリスクオンのムードが強まるような局面では、逆に米ドルの需要が低下気味となって一旦は売り戻す動きが強まることとなるのです。
ただ、今後も基本的には先行き不透明な状態が続くと見られ、また再び米ドルの調達懸念が急激に強まる可能性もあることから、基本的に米ドルは底堅い推移を続けると見ておく必要があるように思われます。
むろん、先週は単に米ドル売りが進んだというだけではありません。同時に、ユーロや豪ドルなどの価値を見直す動きが広がったことで、そのぶん余計に米ドル安の傾向が鮮明になりやすかったという側面もあります。
ユーロの復興計画案合意は未だ不透明
ユーロについては、5月27日に欧州連合(EU)の欧州委員会がコロナ禍で落ち込んだ経済の「復興計画案」を公表したことが好感されて買われ、ユーロ/米ドルは節目の1.1000ドル処を上抜けて一時は1.1140ドル処まで強く買い上げられる場面がありました。
復興計画案が公表されたことによって、今後の欧州景気が下支えされるとの見方が市場に広まった模様ですが、同計画案については「倹約4ヶ国(オーストリア、オランダ、スウェーデン、デンマーク)」と称される国々が反対を表明していることも事実です。
計画実行のためには全加盟国の同意が必要となり、6月11日に予定されるユーロ圏財務相会合において大筋合意が得られるかは未だ不透明です。その点は十分な注意が必要と思われます。
豪ドルは複数の強気シグナルが灯る
一方の豪ドルについては、世界の多くの地域で経済活動再開の動きが広まり、結果的に景気が回復軌道を辿るようになれば、資源需要も復活するとの期待が価値の再評価につながっているものと思われます。
もちろん、足下で強まる基本的な円安の流れもあり、このところ豪ドル/円は上値を試す展開を続けています。
5月27日には、豪ドル/円の日足チャート上に21日移動平均線と89日移動平均線のゴールデン・クロスが出現し、さらに週足ベースでは31週移動平均線を上抜けるなど、足下では複数の強気シグナルが灯り始めてきました。
当面は、62週移動平均線や一目均衡表の週足「雲」下限を試す可能性があると見られ、そうなれば一旦は73円台半ばあたりの水準が意識されやすくなるものと見られます。