米ドル/円とNYダウの相関係数の変化

米ドル/円と株価(NYダウ)の相関係数が、足元にかけてプラスを回復してきた(図表1参照)。この相関係数は、5月初めでマイナス方向への拡大が一巡、縮小傾向が続き、足元で3月以来のプラス回復となった。

【図表1】株価指数と米ドル/円の相関関係の推移(期間:20日間)
出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成

相関係数がプラス1に近付くほど、米ドル/円とNYダウはほぼ同じように動いた(株高=米ドル高・円安、株安=米ドル安・円高)ことを示し、マイナス1に近づくほどほぼ正反対(株高=米ドル安・円高、株安=米ドル高・円安)に動いたことを示している。

そのような相関係数を参考にすると、米ドル/円とNYダウは、3月から5月初めにかけては逆相関の関係が強まっていたものの、5月に入ってからはその関係性が薄れてきたことを示している。

米ドル/円とNYダウの逆相関関係は、株安で米ドルが買われるという「有事の米ドル買い」局面で強まった。「コロナ・ショック」で、世界的な株大暴落が広がる中で、「キャッシュ・イズ・キング」として、基軸通貨の米ドル確保の動きが急拡大した結果と考えられた。

ところが、そんな関係性が上述のように5月に入ってから薄れてきた。5月のNYダウはこの間の高値圏での推移が続き、一時期に比べ株安への懸念が後退した。こういった中で、「株安=米ドル買い」といった「有事の米ドル買い」のケースが少なくなったことが、これまで見てきた相関係数のマイナス縮小ということであり、株安再燃なら米ドル/円との逆相関関係、つまり「株安=米ドル買い」といった「有事の米ドル買い」も再開するのだろうか。

一方で、「コロナ・ショック」が発生する以前は、米ドル/円とNYダウは相関係数がプラス圏で推移する順相関の関係が相対的に強かった。「コロナ・ショック」以降のように相関係数がマイナス圏で推移、逆相関関係が長期化したのは、近年では珍しいケースだった。

要するに、「コロナ・ショック」以降の「有事の米ドル買い」は、近年では珍しいケースだった。その意味では、一頃の「有事の米ドル買い」が終わり、米ドル/円とNYダウなど株価との関係が、「コロナ・ショック」以前の順相関、株安=米ドル安・円高、株高=米ドル高・円安へ戻り始めた可能性も注目される。