ジャスダック上場会社であるサン電子(6736)。1971年に愛知県で創業した電子機器メーカーの同社は、通信機器やモデムなどのコンピュータシステムを製造しています。パチンコホール向けのコンピュータ管理システムでも著名な同社ですが、任天堂ファミリーコンピュータの全盛期からテレビゲームに親しんできた40代前後の方なら、サンソフトブランドのゲームソフト会社としてご存じの方も多いかもしれません。

同社の開発したゲームソフトは数多く、「アトランチスの謎」「水戸黄門」シリーズなどの作品は筆者も耳にしたことがあります。中には実際にプレイしたことのあるソフトも。その中でも同社が開発し、1992年に発売されたファミリーコンピュータ向けゲームソフト「バーコードワールド」は、同社ゲームソフトの先進的な開発思想を感じさせる一作です。当時一斉を風靡した「バーコードバトラー」と連携し、本機には入力したバーコードデータを他の機械に出力できる端子がついていました。

同社の前向きな開発姿勢が垣間見える作品は他にもあります。百姓一揆をモチーフにしたアクションゲーム「いっき」シリーズはアーケードゲームから始まり、携帯電話のアプリやPlayStation3、現在ではゲーム配信サービスを通じPlayStation4やNintendo Switchでもプレイできるようになっています。一つのゲームハードにこだわらない積極的な開発姿勢が、数十年経っても愛される作品づくりに生かされているのでしょう。

PlayStationに代表される据え置き型ゲーム機のスペック向上、スマートフォンを含めたモバイル型ゲームのスペック向上などによりゲームソフト開発コストは上昇傾向です。そのため、多くのゲームソフトメーカーは開発から撤退しているのが現状。パズルゲーム「ぷよぷよ」のコンパイル、「ボンバーマン」「桃太郎電鉄」のハドソン、「燃えろプロ野球」のジャレコといった名作を世に送り出したゲーム開発会社たちはすでに姿を消しました。大企業であっても、多くの企業でゲーム事業の撤退が続いています。

そのような中、サン電子は現在でもゲームソフトの提供を続けています。スマートフォンアプリも配信し、最新のゲームハードにもゲームソフトを供給しているのです。特に、同社は自社開発をゲームソフト事業の強みとしており、下請けの会社へソフト開発を依頼している企業とは一線を画していると言えます。

そうしたチャレンジングな風土が関係しているのでしょうか。2007年、サン電子はイスラエルの「セレブライト」社を買収。現在、同社でもっとも注目されているモバイルデータソリューション事業の中核となりました。

「セレブライト」社はモバイル端末向けの犯罪捜査ソリューションの世界的なリーディングカンパニーです。捜査機関がスマートフォンの分析を委託していると聞いたことがある方も少なくないでしょう。同社の企業価値がサン電子とアクティビストの対峙のきっかけでした。