2兆ドルの大型経済対策法案が成立

先週3月27日、米国では新型コロナウイルスに対処するための2兆ドルの大型経済対策法案が成立しました。企業部門には8500億ドルの枠が設けられ、うち4250億ドル分は中小企業向けの融資枠や航空会社の支援などに充てられ、残る4250億ドルの大半が米連邦準備制度理事会(FRB)の「政府保証」に充てられることとなっています。

この資金を原資として、FRBは企業や地方(州)政府などを対象に4兆ドル規模の資金を供給することとなり、その具体的方法のなかには「社債の購入」も含まれるとされています。つまり、いよいよFRBの役割が従来の金融支援から産業支援へと大きく広がることとなるわけです。むろん、米国内では「まだ不十分」との声も聞かれますが、それは今後の感染症の拡大度合いに応じて再検討されるものと見ておけばいいでしょう。

場合によっては、最終的にFRBによる株式の購入が検討される可能性でさえ皆無とは言えません。ちなみに、前FRB議長のイエレン氏は、過去に「FRB が株式の購入を認められれば、景気悪化時の刺激策として有益になり得る」との考えを示したことがあります。

「ありったけの米ドルを必要なだけ提供する」というメッセージ

このように米国の政府・当局は、これまでにも矢継ぎ早に必要な対策を打ち出してきています。なかでも、先週3月23日にFRBが発表した「経済支援策第2弾」は相当に大きなインパクトとなりました。

既知のとおり、これはFRBが米国債と政府支援機関(GSE)保証付きの住宅ローン担保証券(MBS)を無制限に(必要なだけ)購入するというもので、そのメッセージは市場に強く響きました。

それは、言うなれば「ありったけの米ドルを必要なだけ提供する」ということですから、発表後は市場に蔓延していた米ドル枯渇懸念が一気に後退し、わかりやすく米ドル買い需要が低減することとなりました。

結果、先週は対米ドルで円やユーロを買い戻す動きが急となり、米ドル/円は112円近くの水準から108円割れまで急激に下落、ユーロ/米ドルは1.0635ドルから1.1150ドル近辺まで大きく上昇することとなりました。

対ユーロや対円での米ドル安はいつまで続くのか?

ここで考察しておきたいのは、一つに米ドル枯渇懸念の後退によって促された米ドルの売り戻しはいつまで続くのか、対ユーロや対円での米ドル安は今後も続くのかという点です。

そこで、まず基本的に認識しておく必要があると思われるのは、米政府やFRBが次々に繰り出す諸々の策はそれぞれに一定の効果を発揮すると考えることができ、それらは最終的に米ドルの信認につながっていく可能性が高いということでしょう。

そう考えると、当面の米ドル/円の下値の目安というのも、概ね3月9日安値から3月24日高値までの上昇に対する38.2%押し~50%押し(=107.67円~106.43円)あたりまでの水準に限られる可能性が高いのではないかと思われます。

もちろん、なおもボラタイルな展開がしばらくは続くものと考えられ、ときに大きく値が飛ぶ場面も十分にあり得ると思われます。しかし、当面は週足のローソク足で見て上下に長めのヒゲを伸ばしたところは、オーバーシュートが生じた結果と割り切ってみることも必要でしょう。

一方のユーロ/米ドルは、すでに3月9日高値からの下げに対する50%戻しの水準を超えてきていますが、さすがに61.8%戻し=1.1166ドルあたりの水準に達すると、徐々に上値の重さが感じられるようになってくると見ます。

ただ、市場には欧州中央銀行(ECB)が、必要に応じて「最も強力な債券購入プログラム」を稼働させる可能性を取り沙汰する声も聞かれ始めており、その点は慎重に今後の行方を見守る必要があると思われます。