先週マネックス証券は、2月13日のNISAの日にちなみ、NISA運用に関する調査結果を公表しました。その結果を見て私は驚いたと同時に、日本人の株式投資の実態について改めて不安を持ってしまいました。
私が驚いた箇所は2つです。
1つは、日米株の投資の比率を見ると、米国株と比べ、日本株の比率が高いと思ったことです。2つ目は、NISA口座で投資された日本株と米国株の個別銘柄のパフォーマンスの差があまりにも違い過ぎていたことです。
ホーム・マーケット・バイアスのリスク
今回の調査では、国内株式に投資をしていると回答した人の数は69.1%、その一方で海外株式に投資をしている人が11.5%という内容でした。この海外株式というのは、マネックス証券では米国株と中国株(香港市場に上場している株式)の取引ができますが、この回答のほとんどが米国株だと理解しています。
7割の投資家が日本株に投資をしているという点については、ホーム・マーケット・バイアスという言葉で説明できると思います。
ホーム・マーケット・バイアスとは、投資の世界において自国の金融商品に過剰に投資してしまう傾向のことを言い、別名「ホーム・バイアス」または「ホーム・カントリー・バイアス」とも言います。
人は誰でも自分の国に対して最も親しみを持っており、何かをしようとすると自分の身近なものについて何かしたいというとても自然な現象です。
例えば、旅行をとってもそうです。普通、人は身近なところから旅行する訳で、人生最初の旅行を遠くの国の旅行海外から始める人はあまりいないでしょう。
それ自体は悪いことではありません。ただ、このホーム・マーケット・バイアスが日本人の投資家にとって不幸なのは、日本の株価指数は未だ1989年につけた史上最高値の7割程度のレベルしかないパフォーマンスの良くない市場であり、このような株式市場は、世界中どこを探しても日本くらいだということです。
その一方で、ホーム・マーケット・バイアスがプラスに働いたのは株式市場が市場最高値を更新続ける米国の投資家です。
為替のリスクを取っても日本より高いリターンの米国株投資
過去30年間のTOPIXで見た日本株と、S&P 500の米国株の配当金の再投資を含むトータルリターンを見てみると、日本株の年間単純平均2.4%のプラスに対し、米国株はプラスの11.4%でその差は9%です。
しかも、この米国株のリターンは、円でのリターンですので、日本人が米ドル/円の為替のリスクを取ってもこれだけ違うという結果がでています。
前述のとおり、NISA運用に関する調査結果で私が驚いた2つ目のポイントはNISA で保有されている日本の大企業の株価のパフォーマンスの悪さについてです。
日本株の保有人気銘柄上位10社の1年間の平均騰落率は-5.5%でした。銘柄名を見ると日本人であれば誰もが知っている、言い方を変えると親しみのある企業ばかりです。
その一方で、米国株の取引銘柄上位10社の昨年のパフォーマンスは同期間で+37.4%となっています。これらの銘柄の多くは、日本人にとっても親しみのある会社です。同じ親しみがあったとしても国が違うだけでこれほどパフォーマンスに違いが出ているのです。
私はこの1年間のパフォーマンスの結果だけを見ている訳ではありません。当然米国株のパフォーマンスが悪い年もやってきます。
ただし、長期的な投資という視点で考えると、私は今後もこのような米国株の個別銘柄のパフォーマンスが高い傾向が続く可能性が高く、今からでも米国株の投資をするのは遅くないと思います。
OECDのような機関等も、米国は今後も長期に渡って人口が増え、経済成長率も日本より高く伸びていくだろうと予想しており、優位性を持った米国企業の株式は上昇を継続するのではないかと考えています。
個別銘柄が良くわからない場合は、米国の株価指数の代表的なS&P 500指数の動きに追随するETFに、時間の分散で投資をするだけでも十分だと思うのです。
日本株だけで大切なお金は増やせるのか
誤解のないように書いておきたいのですが、私は日本を否定している訳ではありません。私は日本人ですし、若い時から北米に10年程生活し、世界80ヶ国以上の国々を訪れてきたこともあり、平均的な日本人より、世界の中での日本の素晴らしさをわかっているつもりです。外国人の友人達にも日本は誇りに思い話ができる国です。
それはそれとして、投資は大切なお金を増やす為に行う行動です。
外国の株式市場の見通しが日本株より良いと信じるのであれば、そこは勇気をもって行うべきだと思うのです。株式投資でリターンを上げるという点でみると、日本の企業は、一般的な話ですが、米国の企業と比べ収益が上がりにくい体質になっている会社が多く、それが株式市場のパフォーマンスに反映されています。
是非、皆さんが今行っている株式投資のポートフォリオの保有銘柄を確認し、2年から5年先の日本がどうなっているか良く考えてみて、必要があると思われたら日本株の一部を売って、米国株を買う、または増やすという投資行動をお取りになったら良いのではないでしょうか。
マネックス証券の米国株に関する投資情報が、そのような皆さんの投資行動の判断のお役に立てれば幸いに思います。