グーグル親会社が時価総額「1兆ドルクラブ」仲間入り
S&P 500株価指数は1月22日、3337.77をつけ史上最高値を更新しました。
グローバルIT企業の成長は止まる気配はなく、市場最高値を更新したアルファベット(NASDAQ:GOOGL)は今年に入り時価総額「1兆ドルクラブ」の仲間入りを果たしています。今までに1兆ドルのマイルストーンを達成したのは、アップル(NASDAQ:AAPL)、アマゾン・ドットコム(NASDAQ:AMZN)、マイクロソフト(NASDAQ:MSFT)、そして今回のアルファベットで4社目となります。
米国の株式市場は、米国上院で始まったトランプ大統領の弾劾審査をものともしていません。共和党が過半数を占める上院では、最終的に大統領の弾劾には至らないという見方が支配的なためだと思います。
しかし、1月24日には米国内で2例目の新型肺炎の感染者が確認されたことを受け、感染の拡大を恐れ、S&P 500は1日の下げ率は約3ヶ月ぶりの大きな下げとなりました。
同時進行で米国株式市場では2019年の第4四半期の決算発表が行われています。1月24日現在、S&P 500企業のうち86社と全体の17%の企業が決算発表を終えました。
これまでのところ、決算発表済み企業の78%がアナリストによる事前予想の一株利益(EPS)を上回る発表を行っており、26%の企業が下回っています。一株利益(EPS)のサプライズ、つまり、事前予想と比べてどのくらい予想を上回ったかを見ると、事前予想を3.94%上回っており市場に安堵感を与えています。
1月18日時点の事前予想では、今回の決算発表は前年同期比で1.93%の減益の見通しでしたが、1月24日引けの段階では0.83%の増益に転じています。
今週はアップル、アマゾンなど大型銘柄の決算発表が
今週(1月27日~31日)はS&P 500社のうち140社(28%)の企業の決算発表が予定されており、市場にとって重要な大型銘柄の決算発表が目白押しの1週間となります。
1月28日には、世界時価総額1位のアップル(NASDAQ:AAPL)の決算発表(コンセンサス予想一株利益(EPS)4.54ドル)が予定されています。 昨年1年間で株価が86%上昇したアップルは、この1銘柄だけでオーストラリアの株式市場全体の時価総額を超える規模になっています。
友人であり、私が最も尊敬するウォール街のテクノロジーアナリストであるループ・ベンチャーのジーン・マンスターによると、今年アップルのiPhone事業は安定化し、サービスやウエアラブル事業が会社の成長を継続させることを示唆する内容になるとみています。
昨年アップルの売上は2%減ったものの、2020年は4~6%の売り上げが伸びると予想されています。市場のアップルに対する自信は強化され、今年もアップル株はFAANG銘柄(フェイスブック、アップル、アマゾン・ドットコム、ネットフリックス、グーグル)の5銘柄の中で最も株価の上昇が期待されるとみています。
1月30日には、アマゾンが決算発表を行います。
アマゾンの株価は昨年23%上昇と、S&P 500の上昇率(29%)を下回りました。その理由は、昨年アマゾンは米国内での翌日配送のネットワークのインフラ整備と、将来の投資に力を入れていたためだと思います。
日本の国土の約25倍の広さの米国において翌日配達のシステムを構築するのは至難の業ですが、このインフラが出来上がるとウォールマートやターゲットなど同業他社の二歩先を行くこととなりアマゾンの優位性が高まることになります。
そういったアマゾンの投資の成果は、今年に入り株価に反映されてくるものを思います。
今週決算発表が予定されている他の主要銘柄と予想一株利益(EPS)は以下の通りです(出所:ブルームバーグ)。
1月28日、火曜日
・ファイザー(NYSE:PFE) 0.57ドル
1月29日、水曜日
・テスラ(NASDAQ:TSLA) 1.78ドル
・マイクロソフト(NASDAQ MSFT) 1.32ドル
・スターバックス(NASDAQ:SBUX) 0.76ドル
・ボーイング(NYSE:BA) 1.28ドル
・ゼネラル・エレクトリック(NYSE:GE) 0.18ドル
・エーティー・アンド・ティー(NYSE:T)0.87ドル
1月30日、木曜日
・アマゾン・ドットコム(NASDAQ:AMZN) 4.09ドル
・フェイスブック(NASDAQ:FB) 2.51ドル
・アルトリア・グループ(NYSE:MO) 1.02ドル
・コカコーラ(NYSE:KO) 0.436ドル
1月31日、金曜日
・エクソン・モービル (NYSE:XOM) 0.469ドル
SARS、鳥インフルエンザ後、S&P 500は上昇を続けた
目先の市場では、新型肺炎に絡むネガティブなニュースと米国企業の決算発表の綱引きの相場の展開となると思います。ただし、市場が本格的に上昇を再開するには、新型肺炎絡みのニュースに底打ち感が出る必要があります。
このところ米国株は調整なく上昇を継続してきましたので、少しの株価の調整は長期的に株価が上昇する為には必要不可欠です。S&P 500株価指数は、2019年には、5%以上の調整を3回経験していますが、米国大統領選挙の年である今年は通常よりもボラティリティが高まる可能性が高いと考えられ、少なくともその程度の調整は起きる心の準備が必要かと思います。
今回の決算発表を終えますと、来期からは以下の様に増益基調が続くというのが市場のコンセンサスとなっています。
2020年第1四半期 前年同期比 +2.7%
2020年第2四半期 (同上) +4.5%
2020年第3四半期 (同上) +9.1%
2020年第4四半期 (同上)+14.7%
通年では2020年は前年比で8.6%増益の見通しとなっています。
新型肺炎の米国株に与える影響について、過去の例を参考として見てみましょう。
DJ Market Dataによると、2003年に起きた同じく中国発のSARS(重症急性呼吸器症候群)が世間を騒がせた際は、S&P 500は、2003年4月末から半年後には14.59%上昇、1年後には20.76%しています。SARSは世界中で8,100人が感染、774人が亡くなった不幸な事件でした。
また、2006年の鳥インフルエンザの時には、S&P 500は2006年6月末からの半年後には11.66%上昇、1年後には18.36%上昇しています。
共に株式市場はこういった悪いニュースを織り込むメカニズムがあり、今までの例ですとその後は上昇を続ける展開となりました。
今回の新型肺炎について、一刻も早く事態が収束されるのを祈るばかりです。
1月のアノマリー、今年は既に1つクリア
株式市場のアノマリーについては、このコラムで過去に紹介していますが(「米国株式市場の不思議:アノマリー」参照)、1月の最初の5日間で株価が上がると(1950年~2018年)、81.8%の確率でその年のS&P 500はプラスで終わっています。平均上昇率は13.3%です。これを今年はクリアしています。
また、大統領選挙の年は、過去17回のうち、14回(84.4%の確率)株価が上昇しています。
1月に株価が上がると(1950年~2018年)、85.5%の確率でその年の株価はプラスで終わると言われています。1月24日の段階で、S&P 500 は、年初からちょうど2%上昇です。
相場は確率にかけるゲームであるという視点でみると、こういったデータは無視することはできません。
この1週間、新型肺炎の展開と米国企業の決算発表の綱引きがどう転ぶかで、今年1年間の株価のパフォーマンスの確率がより高くなることとなります。