このレポートのまとめ

  1. トランプ大統領弾劾調査が始まった
  2. ウクライナ大統領にジョー・バイデン氏の身辺調査を依頼
  3. 下院では弾劾が通過しても上院は困難
  4. クリントン大統領弾劾のとき株は高かった

トランプ大統領弾劾調査が始まった

株式市場の参加者にとって「寝耳に水」の事件が起こりました。9月24日、ナンシー・ペロシ下院議長が「トランプ大統領の弾劾調査を下院司法委員会に指示する!」と発表したのです。

これまでナンシー・ペロシ下院議長はロシアゲート疑惑の際も、一貫してトランプ大統領の弾劾に関しては消極的でした。

その彼女が意見を変えざるを得なくなったのは、下院民主党の議員たちの間で「トランプ大統領を弾劾すべき!」という声が抑えられないほど大きくなったからです。

事件の発端

事件の発端はトランプ大統領がウクライナの大統領と電話会談したとき、次期民主党大統領候補のひとりであるジョー・バイデン氏ならびにその息子に関し、何か選挙戦で不利になるような材料がないか調査してくれと依頼したことが発覚したことによります。

ジョー・バイデン氏の身辺調査は、トランプ大統領の責務である国政とは直接関係ないことです。

現職の大統領が、自分の立場を利用して、それを働きかけたことは背任行為に当たるのではないか?というのが調査の焦点です。

弾劾のプロセス

弾劾とは「大統領をやめさせよう!」というアクションを指し、それを提案するのは下院の権限です。

通常、下院はまず下院司法委員会に弾劾動議を起こすだけの証拠があるかどうか調査を指示します。この調査の段階で下院司法委員会が「証拠不十分!」と判断すれば、弾劾の票決は行われません。

今回の場合、まだ票決が行われるかどうかは未知数です。

つぎに票決が行われる場合、下院では過半数の弾劾賛成票が必要となります。現在、民主党は下院で過半数を占めているため投票が行われれば弾劾賛成派が勝つ可能性が高いです。

そのようにして下院で弾劾が決まれば、今度は上院に回されます。上院では過半数ではなく、スーパーマジョリティー、すなわち3分の2の賛成票が必要となります。それは100議席のうち67の賛成票が必要になることを意味します。

現在、上院は共和党が過半数を占めているので67票の賛成票を確保することはほぼ不可能と考えて良いでしょう。

言い直せば、株式市場の投資家はこの弾劾を余り心配する必要は無いのです。

過去の事例

大統領が弾劾された事例は1998年にあります。当時のビル・クリントン大統領がホワイトハウスのインターン生と不倫し、取り調べに対してクリントン大統領が偽りの証言をしました。「宣誓の下で偽証したのは国民に対する裏切り」ということで1998年10月18日、下院で弾劾の投票が行われました。

これが可決されたことで弾劾は上院へ回されました。しかし上院ではスーパーマジョリティーを獲得できず、1999年2月12日に弾劾は取り下げられました。

この間、株式市場は+28%でした。

出所:ヤフー・ファイナンス

このことからもわかる通り、大統領の弾劾動議が動いているからと言ってそれが株にとって必ずしもマイナスにはならないのです。

むしろ今回の弾劾に向けての調査は「雑音」程度に考えておいた方がいいと思います。

 

(編集部よりお知らせ)
都合により、広瀬氏のレポートが一時休載になります。10月25日(金)より再開を予定しています。