このレポートのまとめ

1.新築一戸建て月次住宅販売件数が100万件を突破
2.住宅ローン金利が低水準なことも取引を刺激
3.なぜ新築がブームに?
4.買い手の中心はミレニアル世代

新築一戸建て月次住宅販売件数が100万件を突破

米国の8月の新築一戸建て月次住宅販売件数は前年同月比+43.2%の101.1万件でした。これはリーマンショック前の住宅ブームのあった2006年11月以来の高水準です。

【図表1】新築一戸建て住宅販売件数(千件、月間)
出所:セントルイスFRB

今回のブームは明らかに新型コロナウイルスによる在宅勤務の増加と関係しています。ニューヨークやサンフランシスコなどの都会のアパートに住む家族は在宅勤務で窮屈な思いをしており、オンライン会議中に子供やペットが邪魔をするなどのアクシデントが多発しています。そのため、「もう少し広い家に住みたいな」という願望が強まっているのです。

そこで米国南部を中心とした物件が活発に動いています。南部に注目が集まっている理由は、値段が安いことと新築住宅の供給が多いことによります。

住宅ローン金利が低水準なことも取引を刺激

折から30年固定住宅ローン金利も2.9%と極めて低い水準になっています。

【図表2】30年固定住宅ローン金利(%)
出所:セントルイスFRB

なぜ新築がブームに?

米国の住宅販売は新築よりも中古住宅の方が遥かに大きな市場です。しかし現在のブームは新築中心となっています。

その理由は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、持ち家に住んでいる売り手が見知らぬ買い手に家の下見に来てほしくないという事情があるためです。

しかも、新築なら買い手も新型コロナウイルスの心配をしなくて済みます。

買い手の中心はミレニアル世代

平均販売価格は-6.0%の36.9万ドルでした。平均販売価格が下落した理由は、今まで借家住まいだった小さい子供のいる若いファミリー層が初めての手頃なマイホームを買い求める事例が多かったためです。

普通、米国人は一生のうちに数回家を買い替えます。最初の家は「スターター・ホーム」と呼ばれ比較的安い値段であり、36歳以下の若年層に買われることが多いです。その後、家族が大きくなるに従い、また年収が増えるに従って大きな家に住み替えるわけです。

ミレニアル世代と呼ばれる24歳から39歳の世代が現在のスターター・ホームの主な買い手ですが、彼らはちょうど就職するときにリーマンショックを経験した世代でもあり、その前の世代より最初のマイホームを購入するのが少し遅れています。

先延ばしにされてきた最初のマイホームの購入が、新型コロナウイルス感染拡大による在宅勤務の増加で一気に需要爆発したというのが今回のブームの真相だと思います。