女子プロゴルフのAIG全英女子オープンで、渋野日向子プロが優勝されました。メジャー初出場で、優勝してしまうとは!最後まで攻める姿勢を崩さない素晴らしいゴルフでした。この場をお借りして、心からお祝い申し上げます。

EUとの再交渉は難しい見通し

さて、その英国は相変わらず、ブレグジットで揺れている。

7月24日に新首相に就任したボリス・ジョンソン氏は、欧州連合(EU)から離脱する期限として設定されている10月31日には、英国が「是が非でも」離脱することを改めて表明し、まず離脱ありきの姿勢を明確にした。

ジョンソン首相は、アイルランドのバラッカー首相との電話会談で、EUとの離脱協議の争点となっているアイルランドの国境管理を巡る「バックストップ(安全策)」条項について削除を要請したが、バラッカー首相はこれを拒否している。EU側は、今のところ、英国との再交渉に応じる気配はなく、この問題の溝は依然として埋まっていない。

ジャビド英財務相も、ジョンソン首相と同様に「バックストップ条項を撤廃することが望ましいが、それができないなら合意なしで離脱する」と述べ、ジョンソン首相支持を明確にした。

英財務省は、合意なき離脱に備えて、貨物輸送能力や倉庫保管、備蓄の拡大などを通じて医薬品の供給を確保するために4億3400万ポンド(約557億円)を予算化する。 

また、10億ポンド(約1,283億円)を政府機関や自治政府の備えを強化するために利用できるように準備していると公表した。これで、英政府が合意なき離脱に備えて割り当てた予算は、総額63億ポンド(8,086億円)に達する。

新首相は強気――市場の不安は増幅、ポンドじり安が続く

ジョンソン首相は、強気の姿勢を崩す気配はない。それにより合意なき離脱が現実のものとなる懸念が強まっている。しかし、市場では、合意なき離脱が世界経済や金融市場に及ぼす影響は大きいとの見方が根強い。

イングランド銀行(英中央銀行)も、英国経済の見通しを大変厳しく見ていると言わざるを得ない。カーニー総裁は8月2日、報道インタビューで、合意なき離脱が現実になる可能性は「相当に」あると発言した。

そして、合意なき離脱に至った場合、欧州への輸出や欧州からの輸入に関するゲームのルールが根本的に変わることを理由に、採算性が非常に高い英国内の巨大産業でも、一部の主要産業で採算が取れなくなる恐れがあるとの見方を示した。 特に、自動車・輸送・食品・化学産業では、大きな課題に直面すると述べている。

英国経済全般については、ブレグジットに関連した不確実性の高まりが設備投資を下押ししていることや、貿易摩擦による世界経済の停滞懸念からの成長鈍化を反映して、2018年以降は成長率が鈍化し、潜在成長率を下回って推移しているとコメントした。

金融政策に関しては、米連邦準備制度(FRB)が予防的な利下げを実施し、欧州中央銀行(ECB)も金融緩和を示唆する中、イングランド銀行は引き続き緩やかな利上げを想定していると述べた。

ただ、今後の政策は「円滑な」ブレグジットの成否や世界経済の動向次第で、いずれの方向にも変動する可能性があるとした。 イングランド銀行は、政策金利を0.75%に据え置いたが、英ポンドはじり安の展開で、2017年1月以来の安値圏をうかがう展開にある。

10月31日のEU離脱までは、90日程度しかない。EU離脱期限を再延長することはジョンソン新首相のもとでは、難しいだろう。ブレグジットに関する不確実性は、市場に定着しつつある。しかし、合意なきブレグジットが現実になった際のコストは、十分に想定され、準備されているとは言い難いのではないだろうか。