みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。

注目されたG20も無事終了しました。難しさを増す世界情勢において、日本は議長国としてその存在感を示すことができたのではないか、と受け止めています。米中首脳会談における貿易交渉の再開合意、さらにG20終了後の電撃的な米朝会談なども一先ずは世界景気においてポジティブニュースと受け止めることができるでしょう。

ただし、未だ抜本的解決には至っていない以上、貿易摩擦や地政学リスクが懸念材料として近い将来に再び浮上してくる可能性は否めません。株式市場もポジティブニュースを織り込んだ後はそういったリスクが重石になってくるのでは、と筆者は考えています。

簡単に企業のアウトラインを理解できる

さて今回は「アナリストが解説、会社四季報データ」の基礎編第2弾として、「会社概要」を取り上げましょう。会社四季報では全ての上場企業についてその「特色」と「事業」が記載されています。書店で入手できる分厚い書籍版であれば、社名のすぐ左に必ず位置していますので、簡単に見つけることができるでしょう。

この概要欄は、アナリスト歴が長い筆者でもかなりの頻度で目を通す記述の1つであり、この記述だけでも会社四季報を手元に置いておく意味はあると筆者は認識しています。

もちろん、筆者がよく知っている企業に関しては、この概要欄を読むことはほとんどありません。しかし、新しい銘柄や記憶が薄れてしまった企業を研究、あるいは再研究する場合などには、この企業概要の記載をまず確認するのが筆者のルーティンとなっています。これは、簡単に企業のアウトラインを理解できるツールが実はなかなか他にはないためなのです。

【図表1】会社四季報の誌面例
出所:マネックス証券作成

「特色」企業の全体観や個性を過不足なく記載

もう少し詳細に言及していきましょう。まずは「特色」です。これは例外なく1社あたりおよそ50字以内でまとめられています。書籍版であれば50字というのはわずか2行以内に過ぎず、極めて限定的な文字数での記述となっているのです。

しかし、厳しい文字数制限の中、会社四季報では業界内でのポジション、他社との差別化ポイント、企業戦略の方向性などが簡潔かつ客観的に記載されています。具体的には、業界内のシェアやランキング、製品やサービスにおける当該企業の強み、投資など注力分野に関する記載などです。

こういったまとめは、株式上場を近年果たした企業を除き、事業会社自身がホームページなどで発信している例は決して多くありません。むしろ、会社側発信のホームページは(会社目線で作られていることもあり)全くの部外者には初見でよく理解できないケースも多くあります。

そういった状況でも、あらかじめ会社四季報の「特色」を読んでおおまかな全体観や個性を掴んでおけば、ホームページの内容理解に要する時間は大幅に短縮することができます。最近は社名だけでは何をしている企業かわからないことも多くなりました。会社の実態・特色をきちんと確認しておくことが重要であることは言うまでもないでしょう。

「事業」最も利益率が高い事業部門も確認できる

次に「事業」です。書籍版では、これは「特色」のすぐ左に記載されています。これも概ね50文字程度、多くても70~80文字程度のコンパクトな記載量であることに変わりはありません。

ここで記載されているのは、企業のセグメント(部門別)情報です。複数の事業部門を抱えている企業は多く、その事業部門別の売上構成比率がこの「事業」に掲載されているのです。このデータにより、当該企業はどの事業部門が一番売上を稼いでいるかが一目でわかります。

特に最近は、事業構造の変革によって主力事業が変化したケースも少なくありません。思い込みや先入観で銘柄選択をすることのないよう、冷静に企業の内情を把握するためにもこういったデータの確認は不可欠と位置付けます。

このデータでもう1つ重要なのは、銘柄によっては括弧書きとして、その事業部門の営業利益率が記載されていることです。これにより、売上を最も稼いでる事業部門とは別に、最も利益率が高い事業部門を確認することもできるのです。

この2つが同じ事業部門であればわかりやすいのですが、異なっている場合は要注意です。売上は小さくても、利益面での貢献度が大きい事業部門が存在することになるからです。株価の決定要因は利益である以上、そういった事業部門への注視は必須です。

売上だけを見て判断していては、企業の本質を見誤ってしまうリスクがあるのです。そして、そういった企業は将来、事業構造が変化していく可能性もあり得るのです。

「特色」と「事業」、併せてわずか100文字強の情報に過ぎませんが、そこからはかなりの情報や示唆を読み取ることができます。ぜひ、興味ある銘柄に関して、そういった目線で会社概要欄をご覧になってください。気づかなかった情報がそこに隠れているかもしれません。