日経平均は23,000円台を越えるも勢い見せず

みなさん、こんにちは。株式市場は依然として高値圏での攻防下にあります。先日は久々に日経平均が23,000円を越えてきましたが、そのまま上値を追っていくほどの勢いはまだ見えません。

先物価格を見ても市場は強気にシフトしてきている印象でないのが実情です。筆者はまだこの全体的に方向感のない状況が継続する可能性が高いという認識を持っています。社会行動様式の変化がどこまで実際に起こるのかも含め、それらをしっかり見極めながら銘柄を選択していくことが当面、重要だと考えています。

気になる東証の市場再編の行方

さて、今回はちょっと趣向を変えたアプローチをしてみたいと思います。現在、東京証券取引所が市場区分の再編を検討していることは読者の皆さんもよくご存じかと思います。

2022年4月に新市場区分の発足が予定されていますが、実際にどのような再編になるか、どんな基準が各新市場に振り分けられるのか、などはまだ決まっていません。現時点では2020年11月より実施予定となる現市場の基準変更が示されている段階です。

とはいえ、上場企業にとって自社が今後どういった市場に振り分けられるのかというのは関心が高いところにあり、できるならばその最上位に設定されるプライム市場に配置されたいと考えても不思議ではないことでしょう。特に既に東証1部という最上位市場に上場している企業のほとんどは、それまでにマザーズやJASDAQ、東証2部を経て指定替えを実現してきた経緯もあり、プライム市場に残りたいと考えるのはむしろ自然なことだと考えます。

そこで、今回のコラムではこの視点を会社四季報の活用に取り入れ、より効果的に投資に活かしてみようというものになります。

市場再編によって期待される企業経営の進化

新市場の上場基準を考えるうえで、現時点でいくつかのガイドラインが示されています。株式の流動性や経営成績・財政状態、ガバナンス体制などです。プライム新市場では、流通株式時価総額100億円以上、流通株式比率35%以上などに加え、一定規模の収益・資産が必要との指針が示されています。これらが最終的な基準になるかどうかはまだ決定ではないようですが、プライム市場への上場を狙う場合には、少なくともこれら条件のクリアが当面の目指す基準となるでしょう。

企業側としては、そのために何らかの対策を積極的に打ってくる可能性が高いと考えます。実際、筆者の下にも「プライム市場残留に向けて、どのような対策を打てばよいか」といった相談を寄せる企業も少なくありません。その中にはこれまでIRにあまり積極的でなかった企業も含まれていることを考えれば、市場再編の効果は早くも出始めていると言ってよいかもしれません。

実際、このようなアクションで最も大きな変化が期待されるのが、いわゆるボーダーラインに位置する企業でしょう。ガイドラインクリアに向けて資本市場からの評価を得るべく、積極的なIRに踏み込んでくる可能性があります。もちろん、IR強化だけで企業評価が大きく変わるものではありませんが、そういったIR活動を通じて経営陣に市場の声が反映され、それが経営を進化させるというケースもまた少なくありません。投資家としては、市場再編を契機に、大きく生まれ変わる企業をいち早く見出したいところです。

会社四季報で企業の変化を確認してみよう

ここではプライム市場上場を考えるケースとして、流通株式時価総額100億円以上、流通株式比率35%以上という基準に注目しましょう。まず、会社四季報「財務欄」に記載されている該当社の時価総額を確認してください。理論上、上記基準をクリアする時価総額は100~280億円となるため、現時点でこのレンジにはいっている一部上場企業は、プライム市場をかなり意識するはずです。これが第1のスクリーニングです。

次に、第2の仕分けですが、そうやって目星をつけた企業の株主構成をチェックします。会社四季報から上位10位の大株主を確認し、大まかな流通株式比率の目測をつけるのです。端的には、「役員や持株比率10%以上の株主が保有する株式数が上場株数の内、どの程度あるか」です。これが65%以上(つまり、流通株式比率は35%以下)であれば、プライム市場を意識する限り、近い将来にその比率を下げる(つまり、新たな株主を増加させる)べく、かなりIRをテコ入れしてくる可能性が高いと考えられます。

そして第3に、その企業のホームページを実際に訪問し、IR情報における開示内容を見てみてください。特に、決算説明資料などです。ホームページには過去のアーカイブも閲覧できる場合が多いので、過去と最新のものを比較すればどのくらい内容が変化(進化)しているかが確認できるはずです。IRに積極的になったか否か、さらには市場の疑問・期待を反映した内容が増えているのかどうかなどに注目しましょう。

上記で示される変化(進化)は今後、より鮮明になってくることでしょう。このようなプロセスを経て、埋もれていた有望企業が市場から再評価を受ける機会は確実に増加し、投資家にとっても新たな投資対象が増加してくるのではないかと想像しています。