昨年12月の輸出入が減少、貿易戦争と景気減速の影響浮き彫りに

1月21日、中国国家統計局が発表した国内総生産伸び率 (GDP・2018年第4四半期) は、前年比6.4%増にとどまった。7~9月 (第3四半期)より0.1ポイント低下している。市場の予想に沿ったものだが、このGDP伸び率は2009年第1四半期以来の低い伸びである。

年間で見ると、2018年のGDP(速報値・実質)は、前年比6.6%増となった。2017年には0.2ポイント及ばず、成長率としては、天安門事件の翌年で各国から経済制裁を受けた1990年に記録した3.9%増に次ぐ、28年ぶりの伸び率にとどまった。

先週発表された中国の2018年12月の貿易統計では、輸出が前年同月比マイナス4.4%、輸入もマイナス7.6%と、いずれも2016年以来最大の落ち込みを示した。今回の減少の背景は、米国による昨年9月末からの関税の実施前に、出荷を前倒ししたことによる反動減と、景気見通しの悪化に伴う内需の停滞が理由である。

習近平政権は、トランプ米政権との通商対立に終止符を打つため、国内消費を喚起し、内需によるテコ入れ・貿易黒字の減少策に繋げようと目論んでいるが、国内の状況からは輸入額の拡大策が、簡単に実現できる手段ではないことを示している。

また、今回の統計は、2018年の中国の対米貿易黒字が過去最高を記録した。米中両国は3月1日を交渉期限として設定しており、それまでに米中間で何らかの合意形成がなければ、米国は予定通り中国製品への追加関税率を25%へと引き上げる。

世界経済の成長鈍化や、中国国内での信用の伸び鈍化による影響は、足元では拡大する可能性が高まっている。今年の前半は、いかに短期的な経済のダウンサイドリスクに対応するかが、課題となるだろう。

米中通商協議の進展に注目

一方で、中国政府が、こうしたダウンサイドリスクに対応していくことへのコミットメントは、相当に強いと筆者は見ている。

年末の習主席の演説では、「2019年は、経済成長の急減速を回避するために企業向け減税を実施する」と述べている。李克強首相も、年初4日に、市中銀行の預金準備率の引き下げや減税および政府の手数料の削減を発表し、2019年早々から一段の政策を発動して、金融緩和姿勢を継続している。

中国経済の先行きに対する厳しい見方がより強まる中、3月に開催される全国人民代表会議(全人代)に向けて、追加の政策が発動される可能性は、むしろ高まっているのではないか。

年明けから本格化した米国との通商協議は、事務方の協議が行われているが、中国は貿易不均衡の是正に向け、米国からの輸入を6年間にわたり年間計1兆ドル強に拡大するとの提案を行ったと報道された。劉鶴中国副首相が、1月末に、訪米する予定が発表されている。中国政府にとっては、協議の流れを決めるヤマ場ということだろう。

中国政府は米中首脳会談後、合意内容を着実に履行してきた。米国製自動車に対する報復関税を撤廃し、700品目余りの輸入関税を引き下げたほか、米国産原油と液化天然ガス・大豆の購入を再開するなど、輸入拡大策を次々と打ち出している。

年末にも、一部の輸出入品目の関税を2019年に撤廃する方針を明らかにして輸入促進の姿勢を示し、その本気度は十分にうかがえる。通商協議で、何らかの合意に至れば、それは、中国経済のダウンサイドリスクへの最大の手当てともなる。そういう意味で、やはり、今後1ヶ月あまりは、米中の協議から目が離せないだろう。