雇用は良好

11月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比15万5000人増と市場予想(19万人)を下回ったものの、失業率は3.7%、時間当たり賃金は前年比+3.1%と、ともに前月から変わらず、良好な雇用状態を示すものだった。消費者信頼感指数も現状指数が改善したほか、期待指数も高水準を維持。良好な雇用環境が、消費者マインドの下支えている状況。

個人消費もしっかり

11月小売売上高は、前月比0.2%増と、市場予想の0.1%増を上回った。自動車やガソリン、建材、食品サービスを除いたコア指数も前月比0.9%増と、市場予想の0.4%増を上回った。家具や電子製品、その他幅広い項目のモノが好調に売れ、個人消費が勢いを増している兆しを示した。

住宅投資は弱含み

住宅価格や金利の上昇を背景に、住宅投資は弱含みが続く公算が大きい。

輸出は中国向けが大幅減

夏場以降、中国景気の減速や輸入関税率の引き上げを背景に、中国向けが大きく減少。ただし、中国以外の外需は堅調であり、今のところ、輸出が急減する状況にはなっていない。

設備投資の弱含み

11月の鉱工業生産指数のうち、製造業は前月比横ばい。予想値(0.3%上昇)を下回った。10月は0.1%低下と、速報値の0.3%上昇から修正された。鉱工業設備稼働率は78.5%と、前月の78.1%から上昇した。鉱工業が引き続き経済成長を支えながらも足踏み状態にある可能性が示された。

利上げ打ち止め観測が米国株相場の支援要因に

米国経済は、自律的な景気回復の動きに加え、税制改革効果の残存、政府支出の増加により、潜在成長率を上回る成長が持続する見通し。なお、米中貿易交渉の動向やトランプ政権の通商・外交政策によっては、家計・企業マインドの悪化や企業収益の落ち込みをもたらすリスクがある。

ただし、2020年の大統領選挙を控え、経済対策が実施されるだろう。インフラ投資については、連邦政府が2,000億ドルを拠出し、8,000億ドルを州政府・民間資金でまかなう案が検討されているが、具体的な制度作りは進んでいない。しかるに、今後減税効果の剥落が予想される中、この実現が具体化されるだろう。

また、パウエルFRB議長が11月28日の講演で利上げ打ち止め時期が近づいてきていると発言。利上げ打ち止め観測は、米国株相場の支援要因となる。

さらに、米国は2019年1月以降に予定されていた関税引き上げを90日間猶予することで中国と合意した。休戦という結果になったわけだが、今後中国から何らかの妥協を引き出せ、これが貿易戦争回避につながる可能性もある。

一方、景気の落ち込みが懸念される中国でも、自国経済の成長を刺激する政策により、米国が仕掛ける貿易戦争の悪影響を緩和することに注力するだろう。中国が成長下支えに真剣になり、拡張的な財政・金融政策を行えば、世界経済の安定成長が2019年まで継続する可能性もあると見る。

後編では「今回の米国株調整期と類似した2016年を振り返る」をお伝えする。

 

前編「米国の景気拡大局面は終わりに向かう」についてはこちら。