円安阻止介入の2つの「条件」

日本の通貨当局は、2022年以降これまで6回以上、円安阻止の米ドル売り・円買い介入に出動した。この介入に共通したのは、

1)米ドル/円が120日MA(移動平均線)を5%以上上回る
2)前回の介入局面のピークを上回る

という2つの条件を満たしたことだった(図表参照)。

【図表】米ドル/円の120日MAかい離率(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

例えば、2022年10月の米ドル売り介入で一旦円安は収束した。2023年は円安が再燃したものの、米ドル売り介入は行われなかった。これは、2023年にも米ドル/円が120日MAを5%以上上回ったことはあったものの、この時は前回の介入のピークを超えなかったためと考えられた。

また、2024年に入りそれまでの米ドル高値・円安値の151.9円を更新したものの、すぐに米ドル売り介入は行われなかった。これは、この当時155円を大きく超えるまで、120日MAを5%以上上回るに至っていなかったためと考えられた。

前回介入局面のピークは161円

米ドル/円の120日MAは、足下で150円丁度程度。このため、米ドル/円が157.5円以上に上昇すると、120日MAを5%以上上回る計算になる。上述の2つの介入条件の1つをクリアすることになることから、またも円安阻止介入が注目される局面になりそうだ。

ただし、上述のように2023年は米ドル/円が120日MAを5%以上上回っても米ドル売り介入は行われなかった。これは、前回の介入局面のピーク(当時は151.9円)を超えなかったためと考えられた。こうした介入を判断する「条件」に変化がなければ、今回も米ドル/円が120日MAを5%以上上回っても、前回の介入局面のピークである161円を超えるまですぐに米ドル売り介入が行われるわけではないだろう。

米国ではバイデン政権から、トランプ政権に交代する予定となっている。トランプ次期大統領は、「製造業大国の復活」を選挙公約の1つにあげており、かつては「記録的な米ドル高・円安は製造業にとって大惨事」と語ったこともあった。米国における政権交代が円安阻止にどう影響するかも注目される。