年末年始を迎える前に投資関連でやっておきたいこと
年末年始は何かと慌ただしいものですが、投資においてもやっておきたいことがあります。特に、2024年の年内取引最終日までに取引を済ませておくことで節税できることがあります。また、1年間の運用成果や資産の状況を確認し、今後の予定を立てておけば、2025年も無理なくお金を増やしていけるでしょう。
投資の利益や損失は、毎年1月1日から12月31日の1年間に生じたものを一区切りとして税制上、カウントされます。株式等の譲渡損益の計算は一般的に受渡日ベースで行いますので、年内に受渡が完了する取引が対象となります。なお、一般預り等は約定日とすることも可能な場合があるようですので、詳細につきましては所轄の税務署にご確認ください。次のようなことがあるならば、2024年の年内取引最終日までに取引をしておきましょう。
損益通算と損失の繰越控除
損益通算は、複数の口座の利益と損失を合算した金額で税金の計算を行うことです。特定口座(源泉徴収あり)では、利益があると、利益にかかる税金を金融機関が計算し、自動的に徴収してくれるため、確定申告をする手間が省けます。また、利益が出たあとに、同一年内に損失が生じた場合は、口座内で損益通算が行われ相殺されます。
しかし、複数の金融機関にある特定口座(源泉徴収あり)の口座で同じ年に売買をして、片方では利益、もう片方では損失が出た場合、金融機関同士が連携して損益通算を自動的に行うことはないため、本来支払う必要のない税金を支払う必要が生じます。このようなとき、確定申告をして損益通算すれば、すでに払っている税金を取り戻すことができます。
例えば、課税口座Aで50万円の損失、課税口座Bで30万円の利益があったとします。損益通算しなくても、課税口座Aには税金がかかりませんが、課税口座Bでは利益の30万円に対して20.315%の税金がかかるため、「30万円×20.315%=6万945円」の税金が引かれてしまいます。
しかし、確定申告をして損益通算をした場合、課税口座Aの損失50万円と課税口座Bの利益30万円が相殺できるため、この年の利益は0円、税金も0円になります。これにより、すでに支払った6万945円の税金が取り戻せますので、手取りは30万円になります。
また、損益通算で利益と相殺できなかった損失がある場合は、翌年以降3年にわたって損失を繰り越し、期間内に生じた利益と相殺できます。これを繰越控除といいます。
例えば、課税口座に損失が100万円あったとします。この損失は、最大3年間繰り越して、翌年以降に発生する課税口座の利益と相殺できます。
図表1では1年後に20万円、2年後に30万円、3年後に50万円の利益が出ていますが、確定申告をすることで利益と損失を相殺できるため、税金をなくすことができます。なお、繰越控除をする場合は、たとえ利益がなかった年や取引をしていない年だとしても3年間継続して確定申告をする必要があります。
含み損のある「株・投資信託」の損出しと「配当金・分配金」の相殺
損益通算で相殺できるのは、株・投資信託の売買による利益と損失(売却益・売却損)だけではありません。「株の売却損・投資信託の売却損」と「株の配当金・投資信託の普通分配金」の間でも利益と損失の相殺が可能です。株と投資信託の間でも損益通算はできます(なお、投資信託の特別分配金は損益通算の対象外です)。
損出しとは
含み損となっている銘柄を年内に売却して実現損にすることです。そうすることで、同じ年に得られた売却益・配当金・分配金と損益通算し、税金を取り戻すことができます。
損出しの具体例
例えば、課税口座で50万円分の実現益(売却益・配当金・分配金)があるときに、同じく課税口座で運用中の銘柄に100万円の含み損があったとします。このまま対策をしないと、税金11万5075円(50万円×20.315%)を納めることになります。
しかし、該当商品の年内受渡日となる最終取引日までにこの含み損の資産を一部売却し、50万円の実現損にして損益通算をすることで、損益が0円になります。
これによって、税金11万5075円(50万円×20.315%)を納めずにすみます。このように、含み損のある資産の「損出し」を活用することは、節税対策となります。
確定申告で外国税額控除を申請することで二重課税を回避
日本に住んでいる人が米国株投資で配当金を得た場合、米国と日本の両方で税金がかかります。米国株の配当金にかかる税金は、まず米国の10%(※)が引かれ、次に残った金額から日本の20.315%が引かれます。つまり、二重課税になっているのです。
この二重課税状態をなくすには、確定申告をして「外国税額控除」を申請すればOK。外国で支払った税額を所得税や住民税から差し引くことができます。
(※)ADRや米国市場に上場する非米国籍株式については、 発行会社の国籍によって米国内での課税率が異なるため、お支払いの際は租税条約等による軽減税率が適用されない状態で支払われます。
米国株の配当金が10万円ある場合、二重課税状態だと税額が2万8,283円ですが、外国税額控除を行えば米国の税金が還付されるため、税額を2万315円まで減らすことができます。
ただし、還付される税金はあくまで自分が支払った所得税・住民税ですので、納める所得税・住民税が少ない場合は、全額が還付されない場合もあります。
扶養から外れてしまうケースに要注意
ここまで紹介してきた「課税口座でできる税金対策」ができるのであればぜひ取り組んでいただきたいのですが、注意点もあります。それは、扶養されている人が確定申告をすると扶養から外れてしまうケースがあることです。
特定口座(源泉徴収あり)であれば、投資の利益がいくら出たとしても確定申告は不要で、扶養から外れることもありません。しかし、投資の利益を確定申告すると、投資の利益は「合計所得金額」に含まれてしまいます。
合計所得金額が48万円を超えると、税金を減らす「所得控除」の仕組みである配偶者控除や扶養控除が受けられなくなってしまいます。配偶者控除や扶養控除が受けられないとなると、扶養している人の税金が増え、家族の手取りの合計額が減ってしまう可能性があります。
また、個人事業主や年金受給者などの国民健康保険の加入者、75歳以上の後期高齢者医療制度の加入者が確定申告した場合も、所得が増えて健康保険料が増えるほか、医療費の自己負担割合が増えることもあります。
これらの注意点を踏まえたうえで、事前に確定申告すべきか確認してから手続きするようにしましょう。