モトリーフール米国本社 – 2024年12月17日 投稿記事より

いずれも投機的なエネルギー企業だが、未来が明るいのはどちらか?

クァンタムスケープ[QS]とニュースケール・パワー[SMR]はどちらも、新しい技術で旧態依然としたエネルギー業界を破壊しようとしています。クァンタムスケープはリチウムイオン電池に取って代わる可能性のある固体電池を開発しており、ニュースケール・パワーは原子力発電に革命をもたらす可能性のある小型モジュール炉(SMR)を開発しています。

両社とも特別買収目的会社(SPAC)との合併により上場しました。クァンタムスケープは、2020年11月に初値24.80ドルで取引を開始した直後に急騰し、1ヶ月後には131.67ドルの過去最高値を付けましたが、現在は5ドル前後で取引されています。

ニュースケール・パワーは、2022年5月に初値10.70ドルで取引を開始し、2023年11月には2ドルまで落ち込みましたが、現在は約21ドルとなっています。投資家がクァンタムスケープを見限り、ニュースケール・パワーを支持しているのはなぜか、そしてニュースケール・パワーには、まだ買う価値が残っているのか探ってみましょう。

クァンタムスケープが売上高を生み出すのは2026年以降となる見通し

クァンタムスケープの固体リチウム金属電池は、従来のリチウムイオン電池で使われている液体電解質の代わりに固体電解質を使用しています。そのため、安定性が高く、耐熱性に優れ、充電速度が速いというメリットがありますが、その一方、リチウムイオン電池と比べて設計が複雑で、製造コストが高いというデメリットもあります。

リチウムイオン電池のエネルギー密度が平均300~700Wh/L(ワット時/リットル)であるのに対し、クァンタムスケープが開発した最初の電池「QSE-5」はエネルギー密度が800Wh/Lで、10%から80%まで15分以内で充電することができます。同社は2024年第3四半期にようやく、QSE-5の最初の少量サンプルの生産・出荷を開始したところです。

この技術は有望に見えますが、クァンタムスケープが生産量を引き上げるためには、セパレータープロセスを足元の「Raptor」から新プロセスの「Cobra」へアップグレードし、セルの信頼性、生産効率、全体的な歩留まりを改善する必要があります。このアップグレードは2025年に完了する予定ですが、商業用バッテリーの量産開始は2026年になる見込みです。

そのため、現時点でアナリストは、クァンタムスケープが2024~2026年にかけて毎年5億ドル近くの損失を計上すると予想しています。そして、2026年に最初の商業用電池を出荷し、ようやく700万ドルの売上を上げるとみられています。

クァンタムスケープは、フォルクスワーゲンから引き続き強力な支援を受けていますが、固体電池市場ではブルー・ソリューションズ(仏ボロレの子会社)のような同業他社や、トヨタ自動車(7203)やニオ[NIO]といった大手自動車メーカーとの厳しい競争に直面しています。クァンタムスケープがライバル企業より先に量産体制に入れるかどうかは不透明であり、それが原因で、株価は過去最高値から約96%も下落しています。しかし、これほど急落したにもかかわらず、企業価値は19億ドルと高く評価されているようです。

ニュースケール・パワーにはカタリストが控えている

ニュースケール・パワーが開発するSMRは唯一、米国原子力規制委員会(NRC)から標準設計承認(SDA)を取得しています。同社の小型原子炉は、直径わずか2.7メートル、高さ20メートルの容器(建屋)に設置可能で、大型原子炉に適さない地域にも簡単に配備することができます。

同社の設計はモジュール式であるため、既製のパーツを納入して現地で組み立てることで、時間やコストの削減につながります。しかし、足元で取得しているNRC認証は、発電量50メガワットの原子炉しか対象となっていません。

同社のSMRが石炭火力発電所より高いコスト効率を実現するためには、原子炉クラスターの発電量が少なくとも77メガワットになる必要があります。会社側は、NRCが2025年にも77メガワットの原子炉設計に対してSDAを認証すると予想しています。77メガワットの原子炉は、発電量が同じ従来型原子炉の約1%のスペースしか必要としません。

ニュースケール・パワーの計画は壮大ですが、コストの急騰を理由に、2023年にはアイダホ州で進めていた原子炉6基の建設計画を中止し、2024年には従業員の40%削減を余儀なくされました。こうした大量解雇を受け、米証券取引委員会(SEC)は、同社の雇用、退職金、秘密保持に関する契約について調査を開始しました。

こうした状況にもかかわらず、ニュースケール・パワーには新たなカタリストが浮上し、株価はこの1年間に上昇しています。同社は韓国の斗山エナビリティとSMR部品の供給契約を締結しました。米エネルギー省(DOE)は原子力SMRの開発を加速させるための共同ファンドとして、最大9億ドルを出資する意向を明らかにしました。アマゾン・ドットコム[AMZN]は増大するエネルギー需要を支えるため、先進型SMR4基の開発をめぐって州の公益事業コンソーシアムであるエナジー・ノースウェストと提携しました。

アナリストは、ニュースケール・パワーの2024年売上高は前年とほぼ同水準の2,300万ドルにとどまるものの、2025年には1億200万ドルに急増すると予想しています。しかし、同社は依然として大幅な赤字であり、企業価値は20億ドルで、2025年売上高の20倍となっています。

投資先として魅力的なのはニュースケール・パワー

両社はどちらも投機的な投資対象ですが、既にある程度の売上を生んでいる、競争相手が少ない、予想されるカタリストが明確という点で、ニュースケール・パワーの方が魅力的と言えます。クァンタムスケープに関しては、コストのかかるCobraアップグレードが完了し、最初の電池が発売されるまで待った方が良いかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Leo Sunはアマゾン・ドットコムの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコムの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はニュースケール・パワー、フォルクスワーゲンの株式を推奨しています。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。