政治的な問題、地政学的な問題がマーケットに悪影響

2018年のマーケットを振り返ると、政治的な問題がマーケットを揺さぶりましたが、経済はまだ比較的堅調でした。しかし最近は弱い経済指標が出始めており、2019年に本当に世界経済が減速するのかどうかがポイントになります。

ここのところ国際機関や各国の政府、中央銀行などの経済予測が出てきていますが、2019~2020年は経済減速を予想するところが多くなっています。

世界機関であるIMFとOECDの見通しを見てみましょう。

IMFは10月10日に最新の予想を発表しましたが、7月の公表時点と比べて、世界経済の成長率を2018年は3.9%→3.7%、2019年は3.9→3.7%に下方修正しました。うち先進国は、2018年は2.4%と変わらず、2019年は2.2→2.1%に下方修正、新興国は、2018年は4.9→4.7%、2019年は5.1→4.7%にそれぞれ下方修正しました。

世界貿易量が2018年は4.8→4.2%に、2019年を4.5→4%に下方修正されており、やはり貿易量の減少が経済の減速につながりそうです。

一方OECDが11月21日に発表した経済見通しでも、世界経済の成長見通しは3.7%、2019年は3.5%と、こちらも下方修正されました。

政治的な問題、地政学的な問題は酷いものになっており、これ自体はマーケットにかなり悪影響を与えていると思われます。

米中貿易摩擦は第2の冷戦として長期化?

一番の問題は米中貿易摩擦です。これによって引き起こされる貿易量の減少は直接的に経済の減速材料になります。貿易問題だけではなく、最近では安全保障にも絡めて第2の冷戦ではないかとの分析もあります。

もし第2の冷戦であるのなら、貿易摩擦は数ヶ月で片がつく問題ではなく、数年、もしかしたら数十年かかる問題になる危険性は秘めています。ただし、米中ともに世界経済を破壊するような暴挙は行わないでしょうから、摩擦は激化したり緩和したりしながら継続するものと思われます。

このほか、米国が抱える問題として、昨年に成立したトランプ減税、歳出拡大の効果が徐々に減少して米国経済を支えるには力不足になるのではないかという懸念があります。

また、FRBの利上げ効果も無視できません。利上げが継続することによって、短期金利に上昇圧力がかかり長短金利が縮小していくことも懸念材料になっています。

さらに、ここのところの米ドルの上昇も米国の貿易においては懸念材料です。もっとも、米ドル高は輸入物価を抑えてインフレを抑制する効果はあります。

消費税増税の影響は無視できない

欧州に目を向けてみると、英国のEU離脱に伴う混乱が、英国経済のみならずEU経済にも悪影響を与える可能性があります。

フランスではジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)運動による経済、社会の混乱、マクロン政権の支持率低下が懸念材料になっています。

またイタリアの財政問題も引き続き懸念材料になっています。

日本経済を見ると今年は自然災害が多発しました。これによって生産の停滞、消費者のセンチメントの低下などもあり7~9月期のGDPはマイナス成長となりました。

しかし年末に向かって鉱工業生産は回復をして、消費者のセンチメントも回復基調にあります。もちろん世界経済の減速は輸出を通じて日本経済に悪影響を与えるために、こちらも2019年は世界経済の減速が日本経済にどれだけ影響を与えるのか見極めたいところです。

日本固有の材料としては天皇退位による元号の変更、夏に行われる参議院選挙、10月の消費税増税が挙げられます。

特に消費税増税は過去いずれも経済減速を招いてきましたから、影響は無視できないでしょう。

見渡してみると2019年の経済が2018年に比べて明るいと思われる材料はなさそうです。株価にとってはマイナス材料が多いのですが、一方で為替に関してはどのような動きになるのか、後編「2019年の為替市場は、弱いもの叩きの動き」で占っていきたいと思います。