こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。昨年後半から米国REIT市場が冴えません。「iシェアーズ 米国不動産 ETF」(IYR)は、ダウ・ジョーンズ米国不動産指数との連動を目指すETFですが、直近6ヶ月のパフォーマンスはマイナス3.54%です。一方、「スパイダー ダウ・ジョーンズ REIT ETF」 (RWR)の年初来の成績はマイナス6.17%。国内上場分で云いますと、「iシェアーズ 米国リート ETF」(1659)の過去6ヶ月の騰落率はマイナス12.37%となっています。アマゾンに代表されるEC(電子商取引)や、オンラインサイトの隆盛によって、リアル店舗(商業不動産)が苦戦を強いられている側面があるのでしょう。また、アメリカの長期金利が3%を付けるなど、金利上昇によってREITの魅力が薄れている面もあります。しかし、USリートETFが冴えない別の理由が意外なところにあります。それは、日本の投資家の「毎月分配型ファンド離れ」です。
以下は今年3月末現在の、日本で設定されている投資信託の純資産額ランキングです。1位「新光 US-REITオープン(ゼウス)」7,844億円、2位「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」7,828億円、3位「フィデリティ・USリート・ファンドB(ヘッジ無)」7,423億円、4位「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)」6,094億円。2位以外は、USリート、もしくはグローバルREITの投資信託となっています(グローバルREITのファンドも、投資先の6割以上はアメリカのREITです)。上記REIT関連のファンドは、いずれも苦戦を強いられています(純資産額が減少し、騰落率もマイナスが続いているため)。
一例ですが、「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)」は今年2月の資金流出額が355億円、3月度は229億円となりました。それだけ解約が増えているわけですが、理由は明快です。当該ファンドはこの2月より、1万口あたりの分配金を40円から25円に引き下げたのです。あるいは、純資産額1位の「新光 US-REITオープン(ゼウス)」はどうでしょう。当該ファンドは2017年より資金流出が続いていますが、先月(4月)から、1万口あたりの分配金を50円から25円に引き下げました。今後ますますファンド解約が増えることが予想されます。資金流出がもっとも顕著なのが「フィデリティ・USリート・ファンドB(ヘッジ無)」でしょう。当該ファンドは昨年10月から今年3月までの6ヶ月間で、3,000億円以上の資金流出に見舞われました。主な理由は昨年11月に、1万口あたりの分配金を70円から35円に引き下げたためです。分配金の魅力が薄れ、USリート関連のファンドを解約する人が増えると、ファンドは自ら保有するUSリートを売って、解約の資金を準備しなければなりません。前述した「ラサール・グローバルREITファンド」の基準価額は2,189円まで落ち込んでいます(5月7日現在)。投資信託の基準価額は10,000円からスタートしますから、これまでいかに多大な分配金を出してきたかが分かります。海の向こうの「毎月分配型ファンド」の解約を受けて、USリート市場が影響を受けるとはなんとも皮肉なことです。
コラム執筆:カン・チュンド
2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。