こんにちは。しんようFPオフィス代表のカン・チュンドです。株式市場という装置が円滑に作動するためには、「新陳代謝」が不可欠です。力尽きて退場する企業と、新たに入場する企業がほどよく行き交う状態が理想ではないでしょうか。新たな企業が入場する「新規株式公開(IPO)」は、市場にとっては新入生を迎える儀式です。ちなみにIPOはInitial Public Offeringの略であり、IPOの件数が多ければ多いほど、マーケットが活性化しているとされます。今日ご紹介するのは、新規株式公開(IPO)を果たした企業ばかりを集めた、「First Trust US Equity Opportunities ETF」(FPX)(当社取扱いなし)です。当該ETFは「IPOX-100 U.S.指数」との連動を目指します。当該指数は、時価総額が大きく流動性に富んだ米国のIPO企業100社をピックアップします。通常、上場してから6日目以降が組み入れ対象となり、その後約4年間構成銘柄となり得ます(ただし、指数の基準を満たすか否かを判断するために、四半期に一度銘柄の見直しを行っています)。また、特定の企業の影響を抑えるため、1銘柄の組入れ比率が10%を超えないよう定められています。

 

FPXは2006年4月に米国市場に上場しました(年間経費率は0.59%)。特筆すべきはそのパフォーマンスでしょう。直近5年、直近10年、設定来とも、FPXのリターンはS&P500指数のそれを上回っています。ただし、リスクの大きさ(1標準偏差)は直近3年の場合、S&P500指数の10.16%に対し、FPXのそれは12.05%となっています。さっそくFPXの上位組入れ企業を見てみましょう。1.ペイパル 8.35%、2. クラフト・ハインツ 5.84%、3.アッヴィ 4.81%、4.シャイアー 4.34%、5. フィアット・クライスラー・オートモービルズ 3.11%、6.ツイッター 2.78%となっています(ペイパルはフィンテック、ツイッターはSNS企業。アッヴィとシャイアーはともにバイオ医薬品メーカーです)。FPXの業種別組入れは、情報技術関連が38.65%、ヘルスケア 15.55%、一般消費財 13.75%となっています(いずれも6月29日現在)。FPXと同様のコンセプトを持つETFとして「Renaissance IPO ETF」(IPO)が挙げられます。当該ETFは「Renaissance IPO 指数」との連動を目指します。6月30日現在の組入れ企業数は77社です。

 

最後に、米国以外のIPO企業から成る「First Trust International IPO ETF」(FPXI)(当社取扱いなし)をご紹介しましょう。2014年に米国市場に上場(年間経費率は0.70%)。「IPOX International 指数」との連動を目指します。当該指数は米国以外のIPO企業50社から成ります。具体的には市場に上場して1000日以内のIPO企業、スピンオフ企業から構成されます。上位組入れ国の内訳は、1.中国 28.51%、2.ドイツ 14.74%、3.日本 10.54%、4.イタリア 9.52%、5.香港 7.35%、6.オーストラリア 4.48%となっています(6月29日現在)。直近3年、1年とも、FPXIは「MSCI World 指数(除く米国)」を上回るリターンを残しています。株式市場が続く限り、IPO企業が途絶えることはありません。今後は国別IPO ETFなど、さらに細分化したプロダクトも組成される可能性があります。

 

コラム執筆:カン・チュンド しんようFPオフィス代表