第150回「医薬品・製薬関連のETF」 ETF解体新書

こんにちは。しんようFPオフィス代表のカン・チュンドです。グローバルな見地から見た場合、医薬・製薬業界は今後高い成長が期待できる分野でしょう。先進諸国では高齢化が進展しており、マーケット拡大が見込めます。また、新興国では医療の発展そのものによって、市場拡大が期待できます。まず、日本の医薬品業界から見ていきましょう。TOPIX-17医薬品指数との連動を目指す、「NEXT FUNDS 医薬品(TOPIX-17)上場投信」(1621)があります。当該ETFは2008年の設定(売買単位は1口単位です)。一例ですが、景気敏感株を保有する人が、ディフェンシブな銘柄として「製薬会社の株式」を物色するケースがあります。この場合、別にひとつの製薬会社を選び切る必要はないわけです。製薬セクターを「ひとつの銘柄」として捉え、難なく保有できるのが医薬品ETFの特徴でしょう。1621の全組入れ銘柄は39社とコンパクトです。また、組入れ上位10社で純資産額のおよそ8割を占めます。その上位組入れ10社とは? 1.アステラス製薬、2.武田薬品工業、3.第一三共、4.エーザイ、5.大塚ホールディングス、6.塩野義製薬、7.小野薬品工業、8.中外製薬、9.参天製薬、10.大正製薬ホールディングスとなっています(いずれも8月31日現在)。

続いて、日本を含む世界中の医薬・製薬メーカーを組み込む「iシェアーズ グローバル・ヘルスケア ETF」(IXJ)(当社取扱い)をご紹介しましょう。当該ETFはS&Pグローバル1200指数のサブ指数である、「S&Pグローバル1200ヘルスケアセクター指数」との連動を目指します。当該ETFは2001年の設定。直近の組入れ銘柄数は104社です。ETFの国別割合を見てみますと、アメリカ 70.24%、スイス 8.38%、イギリス 5.03%、日本 4.89%、ドイツ 3.0%、フランス 2.42%、デンマーク 2.08%、オーストラリア 1.82%となっています。米国が製薬業界全体をけん引していることが分かります。その米国企業の製薬セクターを内包するのが「ヘルスケア・セレクト・セクター SPDR ETF」(XLV)(当社取扱い)です。当該ETFは1998年設定の老舗ETFです。年間経費率も0.13%と低廉。XLVの純資産額は180億ドルを超え、直近3ヶ月の1日あたり出来高は600万口を超えています(9月7日現在)。上位組入れ企業には、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ユナイテッド・ヘルス・グループ、ファイザー、メルク、アッヴィ、アムジェン、メドトロニックなどが名を連ねています。製薬メーカーは大きく3つのタイプに分かれます。新薬を生み出す「先発医薬品メーカー」、特許が切れた医薬品を製造する「後発医薬品メーカー」(いわゆるジェネリック)。そして、微生物や動物細胞に医薬を作らせる「バイオ医薬品メーカー」です。前述したアッヴィ、アムジェンなどはバイオ医薬メーカーに当てはまります。また、メドトロニックは、心臓ペースメーカーを中心とした医療機器の製造会社です。XLVの組入れは63社であり、当該ETFの上場以来のトータルリターン(年率)はプラス8.58%となっています。今後の医療業界は、患者の病気を治す対処的治療から、病気にならないよう施す予防治療にシフトしていくことが予想されます。製薬より予防医薬がいつの日かメジャーな存在になるのかもしれません。

コラム執筆:カン・チュンド 

しんようFPオフィス代表

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。