こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。指数は、世の中にETFが誕生する前から存在しています。ダウ平均やS&P500指数は、市場全体の体温を示す「物差し」として、誰もが目印としてきました。この指数を知的財産に変貌させたのがETFやインデックス・ファンドです。ETFは商品の設計上、指数という「型」に載せてはじめて成り立つものです。指数は、さまざまな指数提供会社によって日々管理・算出されています。一例ですが、日経平均株価という指数の提供会社は日本経済新聞社です。また、ダウ平均やS&P500指数はS&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社となります。ETFが世の中に登場し、指数提供会社が「当方の指数をETF名に冠する際には、使用料をいただきます」という理屈が成り立つようになりました。つまり、指数提供会社は商標権者であるわけです。ETFの運用会社は指数を利用する際、指数提供会社に「指数使用料」を支払う必要があります(そして、そのコストは最終的には私たち投資家に転嫁されます)。
指数の利用料は多くの場合、「1ETFあたりいくら」という金額ベースではなく、ETFの資産残高に対してパーセンテージで支払うことになります。世界でもっとも資産規模が大きい「スパイダー S&P 500 ETF」(SPY)(当社取扱い)の目論見書を見ると、同ETFが支払う指数使用料は、資産残高の0.03%+60万ドル(年間)となっており、その金額は膨大なものになります。SPYの純資産額を約2,500億ドルとすると、その0.03%とは7,500万ドルです。以下、あくまで筆者の推測ですが、SPYは高額の指数使用料が足かせとなり、年間経費率(0.0945%)をなかなか下げられないのではないでしょうか。
指数使用料は他のETF運用会社にも負担となっています。たとえばバンガード社は2012年から、ETFに採用する指数をMSCIからFTSEやCRSPに変更し始めました(コストを軽減するためです)。あるいは、Solactiveやモーニングスターといった、より利用料が安い会社の指数を採用する運用会社も出始めています。また一部ETFでは、運用会社自ら指数を組成する動きも見られます。前述のSPYを運用するSSGA(ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ)は2016年、「スパイダーSSGA Gender Diversity Index ETF」(SHE)(当社取扱い)をローンチしました。実は、当該ETFが連動を目指す指数「SSGA Gender Diversity Index」は、運用会社自らが組成・算出したものです。
この流れをさらに推し進めたのが、ファンダメンタルインデックスで有名なウィズダムツリー社です。同社が運用するETFは、自社で組成する指数との連動を目指すため、外部に指数使用料を支払う必要がありません。これからは指数使用料に関して、指数提供会社に更なる情報開示が求められるでしょう。また、指数提供会社間の競争が促進されれば、ETFの更なるコスト引き下げが可能となり、それは最終的に私たち投資家の利益となって返ってくるのです。
コラム執筆:カン・チュンド
晋陽FPオフィス代表
2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。