こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。米国初のETF「スパイダー S&P500 ETF」(SPY)が上場して、今年でちょうど25年になります。現在、世界中に7,000本以上のETFが存在し、投資家、および運用業界に与えた影響は計り知れません。通常の投資信託と比して、ETFは3つの利点を有しています。まず、日中市場価格が変動する中、いつでも取引することが可能です。2つ目は販売会社を必要としないため、購入時の手数料が発生しません(売買時の委託手数料はかかります)。また、信託報酬は運用会社、受託会社のみで分け合うことになります。3つ目には、売買のたびにETF内に資金の流出入が起きないため、結果として維持コスト(信託報酬)を低く抑えることができます。米国モーニングスターによると、2017年末時点で米国のミューチュアルファンド(投資信託)の純資産額は約14兆7,000億ドル、これに対して米国のETFの時価総額は約3兆4,000億ドルとなっています。まだ投資信託の巨大さが目立ちますが、両者の差は年々縮まっています。ETF市場がここまで成長した外部要因として、1.米国株式市場の長期上昇が続いた(市場平均への収益性に対する確信が生じた)。2.ETFの品揃えが充実していった。3.投資家自身のコスト意識の高まり。4.学術的な分野からアクティブ運用に対する疑念が提起され、メディアも関心を寄せたことなどが挙げられるでしょう。

特に、3.のコスト意識の高まりは重要です。金融機関はそれまで、投資信託の購入時手数料と割高な信託報酬で大きな利益を上げてきました(それがETFの登場によって根底から揺さぶられたのです)。たとえば、米国の投資助言業界では、商品を販売して手数料(コミッション)を得る体系から、フィービジネス(顧客の資産残高に応じて報酬を得る形式)にシフトしていかざるを得ませんでした。また、イギリスでは、IFA(金融商品仲介業者)が金融機関から手数料(コミッション)を受け取ること自体、禁止するに至っています。業者が取引の頻度により発生する報酬に依存するのは、顧客に対して中立的でないという判断なのです(以降IFAはアドバイスに関する報酬を受け取ることのみが許可されています)。同様の流れは、オランダやオーストラリアなどでも起こっています。このような運用業界の抜本的な変革を強いたのも、他ならぬETFなのです。

実際、ETFの低コスト化には目覚ましいものがあります。米国の大型株式ファンドの平均信託報酬はおよそ1.25%ですが、ETFの中には、限りなくゼロに近いコスト体系を持つものも現れています。たとえば、「シュワブU.S. Broad Market ETF」(SCHB)(当社取扱なし)、「iシェアーズコアS&P Total U.S. Stock Market ETF」(ITOT)(当社取扱なし)の信託報酬は0.03%、「バンガードTotal Stock Market ETF」(VTI)(当社取扱あり)は信託報酬が0.04%となっています。ETFは今も資産運用の新たな流れを作っているのです。最後に「スパイダー S&P500 ETF」(SPY)(当社取扱あり)の純資産額はおよそ2,500億ドル、4月1日の売買高は1,200万口を超え、世界でもっとも大きいETFとして知られています。

コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。