こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。新興国株式に投資を行う際、多くの投資家が参照する指数が「MSCIエマージングマーケッツ指数」です。同指数のファクトシートを見ると、2月末現在、中国株式の割合は30.3%となっています。この場合の中国株式とは、外国人投資家が容易にアクセスできる「香港市場に上場する中国株」を指し、中国本土市場に上場する人民元建て株式(A株)は含まれていません。2017年にMSCI(指数提供会社)が中国A株の新興国市場指数、およびMSCIオール・カントリー・ワールド指数への組入れを決定し、その組入れが今年の6月、9月と2回に分けて実施される予定です。ただし、当初の組入れは、中国A株のわずか5%(230銘柄)程度にとどまります。それでも中長期的には、本土市場に流入する資金の拡大が見込まれ、A株マーケットの飛躍が期待されます。

日本国内で、中国A株に投資を行うETFをご紹介しましょう。まずは2008年に上場した「上場インデックスファンド中国A株(パンダ)」(1322)です。当該ETFはCSI300指数との連動を目指します。同指数は、上海証券取引所および深セン証券取引所に上場するA株のうち、時価総額および流動性の高い300銘柄で構成される株価指数です。同じくCSI300指数との連動を目指すのが、「チャイナAMC CSI 300 インデックス ETF」(1575)です。同ETFはチャイナ・アセット・マネジメントが運用を行います(もともと香港市場に上場していたものを、JDR形式で日本にも上場させたのです)。同じA株でも、より投資対象を絞るなら「南方FTSE中国A株50 ETF」(1576)が選択肢に上ります。こちらはFTSE中国A50指数との連動を目指します(運用会社は中国南方アセット・マネジメント)。当該ETFもJDR形式で日本に上場しています。

中国社会のキャッシュレス化は有名ですが、ビッグデータ、IoT 、AI、ディープラーニング等の分野でも、国家の後押しのもと、急速に情報社会化が進んでいます。まさに「国家資本主義」とでもいうべき、独自の経済主体が世界に影響を及ぼし始めているのです。A株を「グロース株」の側面で捉えると、「ヴァンエック・ベクトル中国AMC中小企業・創業板ETF」(CNXT)も興味深い投資対象でしょう。当該ETFは、深セン証券取引所の中小企業板(SME)および創業板(ChiNext)に上場する上位100銘柄に投資を行います。CNXTは2014年に米国市場に上場。業種別で見ると、情報通信の比率が34.4%と高く、組入れ1位の「ハンジョウ・ハイクビジョン・デジタル・テクノロジー」は、「HIKVISION」ブランドの監視カメラとレコーダーを製造・販売し、2016年時点で世界シェア第1位となっています。あるいは、A株を業種別で区切ることも可能です(いわゆる「A株セクターETF」です)。一例ですが、「db x トラッカーズ CSI300 中国A株金融 UCITS ETF」(02844)、「db x トラッカーズ CSI300 中国A株一般消費財 UCITS ETF」(03025)、「db x トラッカーズ CSI300 中国A株医薬品 UCITS ETF」(03057)などが選択可能となっています(いずれも香港市場上場)。今後ますます中国A株は身近な投資対象となっていくでしょう。

コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。