今朝のテレビの株価見通しでこう述べた。「NYは大幅反発ですが、日本株は円高が重石となって上値が重いでしょう。昨日、大幅安したあとだけに買戻しを期待したいところだが、反発力は弱いでしょう」
今日の日経平均は寄り付き直後こそ100円高まであったものの急速に上げ幅を縮め、マイナスに転じる場面もあった。その後は円高一服を受けて再び上昇に転じ小幅高で引けた。しかしTOPIXはほぼ変わらずながら前日比マイナスだ。東証1部の売買代金は概算で1兆6666億円と6日以来の低水準。薄商いのなか、方向感が定まらない。
昨日は先週末のNY市場の急落を受けたリスクオフで売られ、今日は円高で戻りの上値を抑えられる。どうにも、こうにも「悪いところ」ばかりに反応しているようだ。
先週金曜日のNY株式市場の急落は、米国の利上げ観測だけでなく、主要国の長期金利上昇が要因と言われる。確かに、日米欧の金融政策を巡る不透明感を背景に、今のマーケットのもっともホットなテーマは、「主要国の長期金利上昇」である。
教科書的には金利上昇は株価を押し下げる方向に作用する。米国株は企業業績が伸びないのに、低金利によってバリュエーションが拡大し株価が押し上げられてきただけに、金利が上がれば株価が下がるのは至極当然である。
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金利と株価が教科書通りにきれいな逆相関になっている米国株に対して、日本株は長期金利と株価はほぼ連動して動いてきた。10年債までマイナスに沈む超低金利にもかかわらず、バリュエーションは一向に上がらなかった。マイナス金利政策をその最たるものとして、日銀の金融政策に対する市場のネガティブな評価の表れであろう。
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だからこそ「総括的検証」を巡って金融政策のフレームワークが見直されるとの思惑で、長期金利が上昇したこの過去1カ月余り、日本株も長期金利の上昇と歩を同一にして上昇してきたのであった。日経平均と10年債利回りが同時に200日移動平均を上回ったのは象徴的である。
昨日の全面安商状のなか、生保株が堅調だったように、イールドカーブのスティープ化を受けてこれまで売られていた金融株が買い戻され相場をけん引した面も大きい。TOPIXを対象としたファクターリターンを見ると、7月以降「金利感応度」のファクターリターンはプラスに転じている。金利上昇は日本株にとってポジティブ材料になっている。
長期金利と株価の連動。この関係は、昨日のような米国株安を映した全面安商状の相場においても維持されていた。売り先行で始まった日経平均は朝方はまだマイルドな下げ幅にとどまっていた。しかし、その後、10年債利回りが低下すると、それを追いかけるかのように先物に大きな売りが出て下げ足を速めていった。ところが昼から金利が上昇に転じると急速に下げ渋る。
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株安でリスク回避となって国債が買われたのではない。赤いライン、すなわち金利の動きが株価に先行して動いていることに注意してほしい。金利を見て株価が反応しているということだ。
では今日のような円高で戻りが抑えられた相場はどうであったろうか。まずドル円とTOPIXの動きがこのグラフ。
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確かに、為替の動きを追いかけているように見える。しかし、円高のピークは10時過ぎであるが、その円高一服にTOPIXは反応していない。むしろ円安に振れ始めた午後1時に今日の安値を付けている。これは為替と正反対の動きである。
冒頭で、「円高一服を受けて再び上昇に転じ」と述べたが、事実とは違う。では事実はなにか。長期金利の低下を嫌気して株が売られたのである。財務省が実施した20年債入札は最低落札価格が市場予想を上回る101円05銭だった。この結果は「強め」と受け止めた向きが多かった。入札結果が発表された12時45分に10年債利回りは今日の最低値0.021%を付けた。TOPIXの安値はその15分後である。明らかに、日本株は長期金利と連動している。百聞は一見に如かず。
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米国と日本では - 当たり前だが - 状況がいろいろ異なる。その最たるものは金利に対する株価の反応だ。日本株にとって金利上昇はポジティブ材料だ。今後、日米欧の金融政策を巡る思惑で長期金利に上昇圧力がかかりやすい局面がくるとすれば、日本株は相対的にアドバンテージを享受できる。欧米株が売られた場合の受け皿にさえなり得ると思う。
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