年末・年始は少し長めの休暇。9連休にできなかったのが少し残念ですが、一度気持ちをリセットするには十分な期間です。どこまで上がるかわからない強気相場ムードを、少し冷静に判断するよい機会となりそうです。
日経平均は昨年3月11日の東日本大震災当日の水準まで戻してきました。凄まじい戻り方です。あと大納会を残すのみですが、年足ベースの高値引けとなるかが注目されます。ちなみに、年足の高値引けは89年以降では一度もありません。
一方、月足では下落トレンドが続く60ヶ月移動平均線(10,011円)を上回る可能性は高いですが、1月以降はその反動に注意したいところ。直近10年(金融危機があった2008年除く)の月間騰落率の平均では、1月は-1.61%と8月の-1.66%の次に下落率が大きい傾向もあるようです。
上昇歓迎ムードから来年は12,000円~12,500円処を目指すといった声も聞こえてくるようになりました。その前に2010年高値11,400円処の大きな節目を超えなければいけません。
やはり、TOPIXも同時に2010年4月高値1,001Pを上回ることが必要です。TOPIXがそこを上回らずして、日経平均の12,000円達成は実現困難でしょう。日経平均の現在値から2010年4月高値までは11%程度ですが、TOPIXの2010年4月高値は現在値から17%程度高い水準にあり、来年末までに限定してもハードルは相当高いです。
今年は証券や不動産、その他金融、建設、銀行といった内需株の上昇が相対的に目立つ展開となりました。物色は明らかに変わった気がします。
特に、不動産は年初から相対的に底堅かったですが、その背景にあったのが足元で盛り上がっているデフレ脱却への明確な方向性だったのですね。株価は何かを物語っているとは、こういったところにも出てくるのです。短期的には反動安はあると思いますが、この流れが続くと、来年は資産再評価といった局面が出てくるかもしれません。JRを中心とした鉄道、NTT、製紙業界といったところなども、仕込み甲斐があるのではないでしょうか。
一般的には安値からの立ち上がりの強さは、より大きな波動の長さを示唆するといわれます。バブル高値以降、長期低迷後に安値から「立(歌会始めの来年のお題)」った、証券、建設、銀行といった内需株は、「辰年」相場の余韻が残る程度の上昇にとどまる傾向が強い「巳年」相場のなかで、注目すべきです。
何度かこのコラムでご紹介しましたが、直近過去に相場のあった銘柄は次の主軸にはなりにくいという、「市場の法則」があります。どうして、トヨタや日産、ホンダよりも富士重工業(7270)がここまで上昇するのか、そこにも市場の法則に準じた理屈があるのです。今年、内需株が上昇したのも、市場の法則です。
2007年に高値を付けた輸出関連や景気敏感株の大半は、高値から急落したあとのリバウンド相場の最中にあるだけかもしれません。のらりくらりの調整は続くでしょう。足元、好調な全体相場の中から、本格的に上昇が続く銘柄(上昇の持続性が高いもの)を見極めなければいけません。大局感でそれを判断できれば、次の比較的大きな押し目で検討するのは業績と買うタイミングだけです。
年内は最後の「相場一点喜怒哀楽」となりました。来年も引き続きよろしくお願い申し上げます。
東野幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ