"下値メドはあてにならない"、そういえばそうですよね。私もこの下落過程でどれだけ下値メドを変更したことか。おそらく見方が甘かったのでしょう。まだまだ、勉強不足ですね。先週10日は劇的な下げの一日でした。日経225先物の売り買い板を見ていて、あそこまで激しかったのは初めて。パソコンが潰れてしまったかのように凄まじい瞬間でした。もちろん私が証券界に入って最大の下げ幅、下落率ですよ。
10日の日経平均の安値は8115円。バブル崩壊後の安値2003年4月安値7603円まであと500円ぐらいまでに接近しました。信じられますか、ファンダメンタルズの悪さの認識も当時と同じ解釈でいいのでしょうか?株価から判断すると、企業の今期減益は相当織り込んだ水準ですよ~。でもそれがわかっていても押し目を買えないのが今の相場でしょう。
テクニカル面では2003年安値に対して、ほぼ全値押しするほどの下げは危険。弱いと判断する必要があるかもしれません。強い相場ほど、"押し目待ちの押し目なし"と言いますから。バブル崩壊後の安値を割り込む可能性もある、と先週末見た評論家のコメントも少なくなかったように思います。
ただ、私はそうなるとしても、一旦は中期的な戻りがあってからの話だと思います。
ファンダメンタルズ分析でも2003年安値当時と比較はできないと思いますし、比較しても株価の説明はできないと思うのですが。そもそも資産価格の上昇がなければ景気もよくなりません。だから逆に考えるのですが、昨年7月高値からの下げの影響が逆資産効果として、これからさらに景気を悪化させる可能性があるのではと・・・。その間、株価が反発の形で待っている間に、悪い部分のファンダメンタルズが2003年当時の悪さに追いついてくるのではないかと。あくまでも、テクニカルを優先的に考えた場合で、株価のあとに材料が追ってくるという発想です。
しかし、個別銘柄は少し別です。いろんな投資尺度(PBRの1倍割れや配当利回り、経営者の考え方、成長性、業界内のシェア、事業の特徴、業績変化率など)がありますからね。特にPBR1倍割れや配当利回りなどは歴史的水準といえるほど。でも、それを無視して下がっている。何がそれに勝っているのでしょうか。
日本株の外国人投資家の売買シェアは5割~6割ですが、今は外国人は大変なんですよ。外資系金融機関で勤める私の友人の話を聞いていると、わかりますね。何も出来ない状態だそうです。そんな状況のなか、日本株を新規に買うわけがありません。
そこで、日本の機関投資家頼みになってきますが、バブル崩壊後、国債運用に頼っていた分、現在の債券バブル崩壊でさらに何も出来なくなっているでしょう。どこもかしこも現金化です。でも、いずれ株式市場でリスクとってくるでしょうけどね。
個人投資家も個別株から指数取引(ミニ日経225先物やETFなど)にシフトしてきている。信用の買い残高も2003年8月中旬以来の水準に減少してるのです。昔はこれだけでも買いシグナルとして説明要因になっていました。でも今は、個別株自体を売買する人が少なくなっているので指標になりません。だれが買い手になるのでしょうか。
先週末から週初にかけて世界株式市場が乱高下のさなか、企業の自社株買いのルールが一部緩和されました。内容は、1日の買付数量について、直近4週間の1日平均売買高の25%が上限であったのですが、これを100%に引き上げる。また、買付時間については、取引終了時刻の直前30分は禁止されていましたが、これを適用しないなど。つまり14時30分以降も買えるということです。適用期限は平成20年12月31日までとのこと。
あまり話題にはなりませんでしたが、その業務を少しかじっていまして、私は企業の自社株買い注文を証券会社に発注する側だったので、目に付きやすかったのかもしれません。
でも、今期減益予想でもバブル崩壊後の経験則から攻めに積極的ではなかった一方、最近までの好況でキャッシュを豊富に持っている会社が意外と多いのです。ただし、自社株買いは積極的な企業とそうでない企業の温度差がかなりあります。やるところは、継続して実施しますので、日経新聞であれば、投資・財務面をマメにチェックすることをお勧めします。
自社株買い自体は、積極的に上値を買うわけではありませんが、下支え効果があるかもしれません。もっとも、自社株買いを発表した会社の株価が、その後堅調に推移するという市場のコンセンサスがあれば十分だと思いますが?
あまり、中身のある話をしているわけでもなく最後になりましたが、今起きている状況はめったに経験できることではありません。生きているうちに一回経験できるかできないか、だと思います。ということは、逆を言えば、こんな相場を経験したことある現役プレーヤーはいない。プロもアマも未知の世界なのです。
東野幸利
株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ
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