“バイオ、ゲノム”、最近は新聞や雑誌なんかであまり紹介されなくなりましたが、どこにいったのでしょうか。来年あたりは株式市場のテーマの1つにならないでしょうかね。ほんと理解するのに難しい分野で、なかなかテーマになりにくいわけです。今日のある新聞に食品セクター内にも株価に格差が出てきているという記事がありました。要するに原料価格の上昇を販売価格に転嫁できているか、できていないかで株価に差が出ているという内容でした。価格上昇はジリ高となっているのですが、来年にかけてはもっと明確に影響が出てくると思います。少なくとも私には記憶にないのですが、食品株全体で大相場になったことって、ありましたでしょうか。食品価格の上昇だけでは、力強い相場にはなりにくいですよね。

そこで、今日はこの業界で相場になりやすいテーマ“バイオ、ゲノム”についてお話させていただきたいと思います。少しでも理解していると、近い将来(来年あたり?)の銘柄選定に役立つと思います。“ヒトゲノムの解読がほぼ終了した?人間の遺伝子の数は31000個存在している。”などと知らされていますが、何のことでしょうか。
順番にいきますと、まず人間の体は60兆個の細胞からできています。赤ちゃんの細胞は3兆個で、それが分裂して2個、4個と増えていき60兆個になるそうです。その1つの細胞の中には核があります。核の中には染色体と呼ばれる糸状の物質が存在します。この染色体はDNAという長い鎖状の化学物質からできています。このDNAがヒトの設計図が書いてある「巻き物」に当たるものです。さらに、このDNAには“アデニン、チミン、グアニン、シトシン”という4種類の塩基が配列しています。染色体は全部で23組あるのですが、これが「ヒトゲノム」というらしいです。その23組全部の中に合計で30億個の塩基が並んでおりまして、この配列を読み終えたというわけなのです。別に中学校の理科の授業ではありません。少しアタマを整理してください。

この30億個の塩基からなるヒトゲノムの中で、意味のある塩基配列の領域を「遺伝子」と呼びます。「遺伝子」というのは、塩基配列の一部の領域のことなのです。その遺伝子の数が31000個存在するということが解っているそうです。意味のある塩基配列「遺伝子」とは何かといいますと、そこにはタンパク質の作り方が記述されているそうです。人間の体は水分と脂肪分を除けばその大半がタンパク質からできていて、今はそのタンパク質の立体構造を解明する作業をやっているわけです。景気が良くなろうが悪くなろうが関係ないですね。やり続けなければいけないのです。病気に関係する「遺伝子」は31000個の「遺伝子」のうち数%しかありません。そういう意味で特許の数は限られています。特許は遺伝子の機能を解明しないととれないそうで、遺伝子を形にするタンパク質を調べないといけない。タンパク質の立体構造を解明することで、それに結合する構造の物質を作り出せば、それが薬になるというわけです。

病気というのは遺伝子の変異によって、正しくないタンパク質が作られることが原因となります。そこで必要なのが「遺伝子導入技術」というもので、正しい遺伝子をより多く的確に目標の細胞の核内に送り込めるかがポイントです。正しい遺伝子を「造血管細胞」(その人が生きている限り、血液細胞を作り続ける母細胞)のように無限に血液細胞を作りつづける細胞に導入すれば、細胞が入れ替わるたびに、正しい遺伝子を持った細胞の方が多くなっていって治療ができるそうです。この遺伝子導入技術に必要なツールが「ベクター」と呼ばれるもの。ベクターの中に正常な遺伝子を組み込んで細胞内に送り込む、一種の運び屋のようなものです。このベクターのノウハウはメドジーンバイオサイエンス社というところが持っていて、そのノウハウを使用して生産・販売を手がけているのが石原産業です。大阪大学がバイオの世界では東京大学や京大よりも上ですが、その大阪大学とベクターで研究を続けてきたのも同社です。でも、月足チャートを見ると、テクニカル的にはまだまだのような気がします。来年は“バイオ、ゲノム”関連で、食品株の大化け銘柄が出てきそうな気がします。それをきっかけに食品株の底上げとはならないでしょうかね。

(株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ 東野幸利)

※なお、12月1日より社名が 株式会社 トレーダーズ・アンド・カンパニーから変更となりました。

※上記内容は、筆者の個人的見解であり、当社として個別に銘柄を推奨するものではありません。