今週は欧州の政治イベントへの反応から始まる。まずひとつは安心材料への反応。ドイツ第2党のドイツ社会民主党(SPD)は、メルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との連立合意が党員投票で了承されたと発表した。ドイツの大連立政権が第4次メルケル政権として発足する。これはユーロ買いとなろうが、イタリア総選挙の結果を見るまでは動けない。
もしも波乱の結果となった場合、そのショックをまともに受けるのは、一番初めにその週の取引が始まる日本のマーケットなので備えておこう。ネガティブな結果になればリスクオフの円高というのが定番だが、しかしユーロが売られドルが強くなってドル円もしっかりということはあろう。またユーロはこの政治リスクが意識され、2月のパフォーマンスは振るわなかった。1日と15日に高値をつけたWトップの格好から月末まで対ドルで軟調に推移していた。悪い結果になっても材料出尽くしで、案外反応しない可能性もある。
今週の重要イベントは日欧の金融政策会合。8日はECB政策理事会が、8-9日には日銀金融政策決定会合が開催される。どちらも会合後の総裁の会見が注目だ。特に日銀の黒田総裁は先日の「出口」発言で市場を動かしただけに、丁寧なフォローが期待される。但し、19年度ごろに出口政策の検討をする、というのは、むしろ当然で、インフレがじわりと上がるなか、そのころになって当局が検討さえしないなんていうことがあるわけがないだろう。さらに日本語の問題として「検討」というのは「出口政策をおこなう」という意味では当然なく、消費増税や世界景気をにらんで「出口政策をおこなうかおこなわないか」を様々な角度から議論するということである。黒田発言に対する市場の反応は過剰である。
米国の景気指標では7日にベージュブック(地区連銀経済報告)、9日には雇用統計が発表される。焦点は平均時給が前月並みの高い伸びを維持するか、もしくは特殊要因の剥落で元に戻るか。(詳しくは2月16日付け「マーケット・スナップショット」ご参照)
日本では8日に10-12月期GDP成長率(2次速報値)と2月景気ウォッチャー調査が発表される。中国では8日に2月貿易収支が発表される。
スケジュールは未定だがトランプ米大統領が鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を発動する署名した場合、EUや中国などの反応次第で相場が動揺するリスクがある。
先週のマーケット展望でS&P500は重要なポイントに差し掛かっていると述べた。25日線と一目均衡表の雲の上限を同時に上抜ければ上値の視界が一気に広がると指摘した。S&P500は瞬間、その水準を抜けたかに見えたが、その抜けたはずの陽線を翌日は陰線包み足で反転、陰線3つで逆に雲を下抜けるという最悪の格好となった。それでも金曜日は陽線で上昇に転じ、まだ完全に下放れたわけではない。上にも下にも抜けきらないでいるといったところである。金曜日の米国株市場で、ダウ平均は4日続落となったが、S&P500とナスダック総合は反発した。特にリード役であるナスダック総合は一目均衡表の雲の中でとどまっている。ここで切り返せば反騰のトレンドは崩れない。
週明けの日本株は、先週金曜日のロンドン時間で105円台前半まで進んだ円高が嫌気されるかもしれないが、NYの終値は結局東京の15時時点と同じ105円75銭。この水準なら過度な反応はないだろう。
先週末の日経平均は200日移動平均を意識してぎりぎり2万1000円台を死守した格好だ。まずは欧州の政治イベント次第だが、日欧の金融政策決定会合に雇用統計など重要な材料が目白押しの今週も神経質な展開が続く。何より米国株市場の値動きの荒さが落ち着くことがポイントとなるだろう。タイトルに「激しい値動きが落ち着くか」と書いたが、今回の急落の最大の原因は株価そのものの動きであることは従来から述べてきた通り。従って株価変動そのものが最大の注目点。それに対する予測は困難だ。ここは「相場のことは相場に聞け」と割り切って、株価の値動きが小さくなるのを見つめるしかないだろう。
日経平均の予想レンジは2万900円~2万2000円。