こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。通常のインデックス運用は、時価総額加重型の市場平均との連動を目指します。それに対してスマートベータは、「ある種の意思を持ったインデックス運用」と云えるでしょう。何らかの銘柄選択ルールに従って指数を組成し、その指数との連動を目指すわけです。本日はウィズダムツリーが運用するスマートベータ系新興国株式ETFをご紹介します。

まず「ウィズダムツリー新興国株ニューエコノミーファンド」(XSOE)です。当該ETFは国有企業以外の新興国株式をピックアップします。ウィズダムツリーが定義する「国有企業」とは、政府が発行済株式の20%以上を保有する企業を指します。新興国は経済そのものが発展途上にあり、大企業の株式を政府が一定割合保有するケースが多々あります。あえてこのような国有企業を排することで、市場原理に則った利益追求を目指す企業の成長を取り込もうという戦略なのです。当該ETFは「ウィズダムツリー エマージングマーケッツ・エックスステートオウンド・エンタープライズ・インデックス」との連動を目指します。同指数のユニバースには、ブラジル、チリ、中国、チェコ、ハンガリー、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、メキシコ、フィリピン、ポーランド、ロシア、南アフリカ、台湾、タイ、トルコの企業が含まれます(ウィズダムツリーの特徴は、自社で株価指数を組成・算出している点でしょう)。XSOEの上位国別比率は、中国 30.57%、韓国 15.51%、台湾 10.95%、インド 9.53%、南アフリカ 7.51%となっています。業種別では、情報技術 32.47%と金融 17.82%でおよそ5割を占めます。組入銘柄の第1位は、中国のIT企業テンセント・ホールディングスで比率が7.31%と突出しています(いずれも2017年12月末現在)。結果として、当該ETFは特定業種にややフォーカスしていると云えるでしょう。

続いて「ウィズダムツリー新興国株クオリティ配当成長ファンド」(DGRE)です。当該ETFは「高配当」と「成長性」に着目して銘柄選択を行います。連動指数は「ウィズダムツリー新興国株クオリティ配当成長インデックス」。同指数は、成長と品質の最善の組合せの順位付を用いて選ばれた300銘柄で構成されます。成長因子は、長期的な利益成長の期待に基づきます。また品質因子は、ROAおよびROEの過去3年間の平均値に基づきます。DGREの上位国別比率は、インド 16.03%、台湾 12.85%、中国 12.06%、ロシア 10.44%、南アフリカ 10.11%となっています。また業種別の構成比は、一般消費財・サービス 20.81%、情報技術 19.67%、生活必需品 16.81%、素材 10.16%と続き、金融やエネルギーの組み入れが少ないのが特徴です(いずれも2017年12月末現在)。なお、DGREの指数は、1株当たりの配当額を基準として、各組入企業が翌年払うことが予想される現金配当総額の比例割合を反映させるため、年に一度、配当額でウェイト付けが行われます。スマートベータは「高配当」「低リスク」「成長性」など、ファンダメンタルに着目して指数を組成するため、銘柄の入れ替えが定期的に起こります。売買コストなどには留意する必要があるでしょう。

コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。