こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。今日、家電、アパレルや、クルマ、食料品にいたるまで、さまざまなショッピングが「オンライン化」しています。オンライン小売業の一大勢力がアマゾンですが、米国ではアマゾンとの競争で小売店(実店舗)の経営が苦しくなることを、「Death by Amazon」と呼びます。アメリカでは今後5年間に、およそ25%のショッピングモールが閉鎖するだろうと予想する専門家もいるのです。そのような流れの中で昨年設定されたのが、「ProShares Decline of the Retail Store ETF」(EMTY)(当社では取扱いなし)です。当該ETFは売上の50%以上を実店舗から得ている企業を組み入れています(業種は多岐にわたります)。つまり、ネット販売によって、その存亡が危ぶまれる会社を保有するのです。
当該ETFは組み入れ銘柄をすべてショート(売り建て)しており、保有企業の株価が下がるほど、利益が出る仕組みになっています。昨年末現在、56の銘柄が組み入れられていますが、保有比率はすべて均等です。組み入れ企業にはアメリカ最大の書店チェーン「バーンズ・アンド・ノーブル」、家電量販店の「ベスト・バイ」、「J.C.ペニー」「ノードストローム」などの百貨店、カジュアルアパレルの「ギャップ」、ベビー・キッズブランドの「チルドレンズプレイス」などが含まれ、農業用品小売店チェーンの「トラクター・サプライ」や、堅木材を販売する「ランバー・リィクイデターズ」なども入っています。業種別では、アパレル28.48%、専門店19.74%、百貨店10.42%、食料関連8.94%の順となります(12月末現在)。
次に、こちらも昨年設定された「Global X Founder-Run Companies ETF」(BOSS)(当社では取扱いなし)です。当該ETFは、創業者によって経営されるアメリカの企業を組み入れます(大型株、中型株に特化)。ETFの利点は、規模別、国・地域別といったシンプルな市場全体のみではなく、ユニークな視点で大胆に「独自の市場」を想定し、商品として組成できることにあります。当該商品はまさに「創業社長ETF」と呼べるものでしょう。創業者が率いる企業はビジョンが明快で、長期的な視点を持ち、経営方針にブレが生じにくい特徴を持っています。
具体的に見てみましょう。当該ETFには「エヌビディア」「ツイッター」「スクエア」などのIT企業が組み入れられています。金融では、「ブラックロック」「インタラクティブ・ブローカーズ」などを、またバイオテクノロジーでは「シアトル・ジェネティクス」などを組み入れています。カジノリゾートの「ラスベガス・サンズ」も要注目でしょう。業種別では、IT、ヘルスケア、一般消費財・サービスで全体のおよそ6割を占めます。組み入れ企業は総じて、配当を出すよりも成長を優先させるため、当該ETFの分配金は年に1回となっています。最後に、米国でニッチETFが出現する背景には、ETFマーケットの裾野の広さが関係しています。今後もさまざまな潜在ニーズをくみ取った個性的なETFを見たいものです。
コラム執筆:カン・チュンド
2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。