金融列伝、今回はスーパートレーダー・NR氏の登場です。NR氏は世界一有名なソ★ス・ファンドの旗艦ファンドの運用者で、ソ★ス一派のナンバー2でした。彼は巨大なポジションをトレードしていたので、世界中の証券会社が彼を追い掛けていましたが、同時に全てのセールスマンが彼を畏れていました。一風変わった行動、鋭い眼光、一切の嘘を許さない厳しさ・・・そういったことが、彼に近寄りがたい雰囲気を作っていたようです。今回は先ずNR氏との出会いを書きたいと思います。

あれはもう10年近く前のことでしょうか、当時彼は”カンカンに”日本国国債をショートしていました(”カンカンに”とは、トレーダーの間で”目一杯に”という意味を表します)。即ち、日本の金利は上がると踏んで、金利が上がれば巨額に儲かり、金利が下がれば巨額の損をするポジションを持っていた訳です。私は当時、前職の大手米系証券会社で、円金利関連リスクの責任者(円債券・円スワップなどのトレーディングの責任者)を務めていました。そんな或る日、セールス氏がNR氏を連れてきました。私は会うのは初めてだったのですが、セールス氏はミーティングの冒頭からかなり緊張していました。
NR氏曰く「円金利の市場はどうだ?」。私はそれから延々と、平然と、そして極めて明白かつ強い調子で、これから当分の間日本国国債の金利はきっと下がり続けるであろう、そしてその理由は斯斯然然(かくかくしかじか)と説明しました。つまり私は、NR氏の判断は間違っているということを暗に、しかし強く主張した訳です。脇に座っているセールス氏は居ても立ってもいられない様子で冷や汗を掻いていましたが、NR氏は微動だにせず、鋭い目つきで私の話を聞いていました。

セールス氏が話題を変えようとすること数回、NR氏はそれを抑えて私に2つだけ質問をしました。それは極めて簡潔ですが、とても重要な論点だったと思います。私が答えるとNR氏は笑いもせず、単に「サンキュー」と言って握手をし、そのまま帰って行きました。(長くなったので、あとは次回に「つづく」とさせて頂きます)

追伸:本日、平成17年3月期・第3四半期業績発表を行いました。併せて、   「マネックス−フルトン アジア ファンド・オブ・ヘッジファンズ」   の設定に関する発表も行いました。資料は全てMBHのホームページに   掲載されておりますので、是非御確認下さい。