日本国債の格付けの問題は、ムーディーズ(格付け機関)も日本政府も、どっちもどっちだと思っていたのですが、今朝の新聞で平沼経済産業大臣が、「国民の半分がエイズ患者であるボツワナよりも格付けが下がったとはけしからん。日本はボツワナの最大の援助国なのにそれより(格付けを)下げられた。」とムーディーズを批判したと聞き、流石にこの発言には呆れました。そもそもこれはボツワナに対して甚だ失礼な話だと思いますが、その部分を百歩譲っても、政府は「国の格」と「国債の格付け」の違いを理解しているのでしょうか。例えばこう考えてみましょう。甲さんは家柄はいいのですが浪費癖があり、年収1000万円に対して毎年2000万円使ってしまい、既に1億円の借金があります。プライドが高く、借金を頼まれるとすぐ貸してしまいます。贅沢三昧で脂肪肝になっており、肥満体ですが、薬を飲んでいるので長生きしそうです。一方乙さんは、貧乏ですが堅実に暮らしています。年間100万円しか収入がないのですが、助けてくれる人も多く、毎年100万円は寄付を受けていて、かつ向こう10年間、寄付の約束を取り付けています。総収入の範囲内で暮らしているので、借金はありません。食べることにも若干不自由で、お医者さんに行くお金も時間も節約しており、体は弱そうで早死にしそうです。
さて、甲さんと乙さん、それぞれから5万円の借金を頼まれたら、あなたはどちらに貸しますか?国債の格付けとはそういうものです。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。