半導体組み立て(後工程)技術のグローバルリーダー
キューリッキ・アンド・ソファ・インダストリーズ[KLIC]は、1951年に設立された半導体組み立て(後工程)技術のグローバルリーダーです。半導体デバイスの製造において、最終段階にあたるパッケージングやアセンブリに使用されるキャピタルエキップメント(製造装置)および消耗工具の設計、開発、製造、販売、そしてそれらのメンテナンスやアップグレードサービスを世界規模で展開しています。
主な報告セグメントは、「ボールボンディング装置」、「ウェッジボンディング装置」、「アドバンスト・ソリューション」、そして「アフターマーケット製品・サービス(APS)」の4つで構成されています。
【1】「ボールボンディング装置」セグメント
「ボールボンディング装置」セグメントでは、スマートフォンやパソコン、データセンター向けの一般的なロジックやメモリ半導体の量産において中心的な役割を果たす高速なボールボンディング装置およびウェーハレベルボンディング装置を展開しています。
【2】「ウェッジボンディング装置」セグメント
「ウェッジボンディング装置」セグメントは、大電流が流れるパワー半導体や自動車用半導体、大型の産業用デバイスの高電流・高信頼性に対応するウェッジボンディング装置を取り扱っています。
【1】と【2】はいずれも、半導体チップと基板を細い金属線で接続する「ワイヤーボンディング装置」という大きな技術カテゴリーに含まれる同社の伝統的な主力製品です。
【3】「アドバンスト・ソリューション」セグメント
さらに「アドバンスト・ソリューション」セグメントでは、最先端の人工知能(AI)サーバー向けに需要が爆発している熱圧着(サーモコンプレッション)ボンディング(TCB)システムや高度なディスペンスプラットフォームなどの最先端ソリューションを提供しています。
【4】「アフターマーケット製品・サービス(APS)」セグメント
そしてこれらの販売後を担う「アフターマーケット製品・サービス(APS)」セグメントがあり、自社および他社製の装置向けに様々な工具、スペアパーツ、メンテナンスサービスを提供しています。
またこのほかに、その他のカテゴリーとして電子部品実装システムなどが存在します。
ワイヤーボンディング装置で世界トップシェア
同社の最大の強みと特徴は、半導体チップと外部の基板を細い金属線で接続する「ワイヤーボンディング装置」において、世界トップシェアを握っていることです。特にその主軸であるボールボンディングおよびウェッジボンディング装置においては世界で約60%~70%という圧倒的なトップシェアを獲得しており、世界中の大手受託製造企業(OSAT)や垂直統合型メーカー(IDM)の工場で稼働しています。
ボールボンディングは、ワイヤーの先端を火花で溶かして「球(ボール)」を作り、それを熱と超音波でスタンプのように押し付けて接合する手法です。全方向に超高速で配線できるため、スマートフォンやパソコン、データセンター向けの一般的な半導体(ロジックやメモリ)の量産で最も広く使われています。同社最大の収益源でもあります。
ウェッジボンディングは、先端を溶かさず、ワイヤーを楔(ウェッジ)型の工具で直接押し付け、超音波で擦り合わせて接合する手法です。熱に弱い素子を守ることができ、太い線も扱えるため、大電流が流れるパワー半導体、自動車(EV)用半導体、大型の産業用デバイスなどで使われています。
売上の25%を構成するアフターサービス事業が業績を下支え
さらに、APSセグメントが提供するノズルやウェッジ、ブレードといった消耗工具の販売が全体の売上高の25%を占めており、これが装置の販売サイクルに左右されにくい安定したリカーリング(ストック型)ビジネスとして機能しています。半導体の受託製造を行う工場(OSAT)は、発注元である米国の巨大ファブレス企業などから、どの装置とどの消耗品を使って製造するかという厳格な「製造認定(クオリフィケーション)」をチップごとに受けているケースがほとんどです。
一度KLICの装置を導入した顧客は、品質の安定維持とエンドユーザーへの説明責任という観点から、必然的に同社の純正消耗品を買い続けざるを得ない構造になっています。これが他社への乗り換えを阻む強固な障壁となり、半導体市況の悪化で装置自体の販売が一時的に落ち込んだ局面でも、業績を下支えします。
このストック型の収益基盤があることで、財務は安定的です。長期負債比率わずか0.05倍と実質無借金に近いキャッシュリッチ体制を維持しており、世界的なマクロ経済の動揺に対しても極めて強い耐性を持っています。この強固な財務基盤のおかげで、市況の不況期であっても最先端技術への研究開発(R&D)投資を継続し、また同時に株主還元を安定して実施できる構造を実現しています。こうした強固な事業基盤を持つ同社ですが、現在は単なる伝統的な装置メーカーに留まらず、最先端の人工知能(AI)向け半導体や次世代メモリの製造に不可欠な「アドバンスト・パッケージング(先進後工程)」の領域に展開を進めており、構造的な変革期を迎えています。
最先端AI市場における技術的優位性と競争力:熱圧着ボンディングで先行
ハイテク投資家の間では、次世代の超微細接続技術であるハイブリッドボンディングの領域において、先行競合に後塵を拝しているのではないかという懸念が囁かれる場面もあります。確かに、超ハイエンドな最先端ラインでの実装という点では一歩譲る部分はあります。同社もハイブリッドボンディングやパネルレベルの次世代技術を開発中です。しかし、現在の生成AIブームおよびデータセンターの実需サイクルを勝ち抜く上では問題になりません。
なぜなら、現在世界中で爆発的な増産体制が敷かれているAI用高帯域幅メモリ(HBM)の主戦場は、ハイブリッドボンディングではなく、依然として「TCB(熱圧着ボンディング)」が主役だからです。同社はこの主戦場において、洗浄剤を使用しない「フラックスレス熱圧着ボンディング(FTC)」の技術で市場をリードしており、幅広い顧客での採用拡大と生産能力の急ピッチな立ち上げが進んでいます。
同社は、2026年度のTCB事業の売上が前年比で70%以上増加すると予想しています。さらに同社は、高価なシリコン貫通電極(TSV)に頼らずにメモリの3次元積層を可能にする独自の「Vertical Wire(垂直ワイヤー)」技術など、競合とは異なるアプローチで高密度実装市場を面で押さえる強力な参入障壁を構築しています。受託製造(OSAT)の標準機として君臨し、最もボリュームの大きい実需を利益に変えています。
リスク:中国依存度の高さ
一方で、直近6ヶ月間の出荷ベースにおいて、売上全体の54.6%が中国に本社を置く顧客向けとなっており、中国のOSAT大手である天水華天科技(16.9%)や長電科技(10.7%)への依存度が高いというリスク要因も確認されました。
また地政学リスクが懸念されていたイスラエルのハイファ拠点については、業務や製造への影響、労働力への支障は現時点で軽微であり、目立ったインフラの停止は発生していないことが報告され、懸念が和らいでいます。
業績回復でバリュエーションは割安か。投資判断は全体市況の底打ちを待ってから
株価は年初来で大きく上昇していますが、予想ベースでのPERは低水準です。2026年9月期の市場平均予想EPSは3.09ドルとなっており、7月27日(月)の終値98.22ドルから計算すると予想PERは31.8倍となります。派手なAI成長株ではありませんが、確実な実需に裏付けられた業績回復が見込まれる銘柄だと思います。
なお、7月27日(月)に中国のメモリ企業CXMT(ChangXin Memory Technologies)が中国本土、上海証券取引所のSTAR Market(科創板=ハイテク新興企業向け市場)に上場し、株価が急騰。さらには同日に中国上海の国営企業が液浸型DUV露光装置の量産を開始するとの報道もあり、半導体関連企業が急落しており、同社株もその影響を受けて下落しています。投資を検討する場合には、市場全体の下げ止まりを待ってから投資をすることも重要かと思います。
