先週(6月15日週)の動き:米イランの和平合意期待の上昇から、FOMCを受け国内外の金価格ともに大幅反落

米国とイランの和平合意期待で前半は上昇

先週(6月15日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、大きく乱高下する波乱の展開となった。週前半は米国とイランの和平合意への期待から原油価格が1バレル75ドル前後と約3ヶ月半ぶりの水準まで低下し、インフレ懸念の後退観測から、6月17日のNY時間早朝には一時4,400ドル台まで買われた。ところが同日の午後になり、FOMC(米連邦公開市場委員会)にて年内利上げ示唆と、ウォーシュ新体制におけるFRB(米連邦準備制度理事会)の運営方針の大きな変化が表面化したことを受けて、急落した。

当日の時間外取引で、NY金は100ドルほど水準を切り下げたため、翌6月18日の通常取引は前日比135.50ドルの大幅安となる4,245.9ドルで終了した。6月19日の米国市場は「ジューンティーンス(奴隷解放の日)」の休日の関係で、この価格が週末の終値となり、週足は前週末比7.1ドル(0.17%)高と小幅に反発した。レンジは4,220.3~4,403.6ドルで値幅は183.3ドルと、前週(6月8日週)の342.4ドルよりも小さくなったが、それでも比較的大きい。

NY金の押し目を深めたFOMC

先週(6月15日週)のNY金の流れはこのように6月17日のFOMC後に急変した。中東のエネルギー輸送を巡る懸念が薄れ、インフレ懸念が和らいだことでFRBの利上げ観測が後退し、リスクオンムードの中でNY金に買いが入ったのは、6月17日のNY早朝(ロンドン時間帯)だった。一時4,403.6ドルまで買われたものの、それ以上の上値は重く通常取引は4,381.4ドルで終了した。その後の時間外取引の時間帯にFOMCの結果が明らかになり、ウォーシュ議長の記者会見の間に売りが膨らみ、後述するように水準を切り下げた。

政策金利(3.5~3.75%)は据え置かれたものの、四半期ごとの金利予測(ドット・チャート)では、年内に少なくとも1回の利上げを予想するメンバーが半数の9人に達した。直近の米国指標の堅調さや、AI(人工知能)向けインフラ投資急増に伴うインフレ圧力の波及がFOMC内で共有されたことが背景にある。 

さらに市場の注目を集めたのは、ウォーシュ新議長による従来のFRB運営からの明確な「体制転換(レジュームチェンジ)」だった。市場との対話(コミュニケーション戦略)の刷新として、具体的な運営上の変化が示された。

(1)フォワードガイダンスの撤廃

従来の議長とは異なり、今後の政策金利の方向性を示すフォワードガイダンスを批判し、今回の声明文では年内の追加利下げの可能性を示唆する文言が削除された。声明文の行数も前回4月の半分になった。

(2)自身の経済予測値(ドット)提出見送り

パウエル氏やイエレン氏などの歴代議長と異なり、ウォーシュ議長自身は経済予測値(ドット)を提出しなかった。このことは、事前の同議長の発言内容からある程度予想されていたものの、現実のものとなったことで市場にはインパクトがあった。

当局者の予測に対しても記者会見では「消しゴム付きの鉛筆を使う」と比喩表現を使い、ドットを過度に重視しない姿勢を示していた。金利を中心に今回の経済予測分布図(ドット・プロット)は、参加メンバーの全員(19名)ではなく、議長を除く18名が提出した予測数値の中央値で示されることになった。

(3)タスクフォースの設立

市場とのコミュニケーションの見直しや2%のインフレ目標の算定方法の見直し、コロナ禍で膨張したバランスシートの縮小(FRB保有資産の縮小=市場からのドル吸収)などを検討する作業部会(タスクフォース)を設け、年末までに結論をまとめると表明した。 

この利下げから利上げへの方針転換と新体制への移行は、タカ派的だと受け止められ、NY金は大きく売られることになった。6月17日の時間外取引で一時4,237.40ドルまで急落し、前述のように3連休前の翌6月18日の通常取引は前日比135.50ドルの大幅安となる4,245.9ドルで終了した。

国内金価格、2025年12月来の安値水準で滞留

NY金の乱高下を受け、国内金価格の値動きも大きくなった。週初に大きく上昇し、週末にかけて上昇分をすべて失うことになった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)は週初の6月15日、前週末比725円高の1万2735円で終了した。

週末6月19日は、前述のNY金の大幅下落を反映し、前日比841円安の2万1920円で終了した。この水準は前週6月11日の2万1556円を上回るものの、2025年12月初旬の水準に相当する。週足は前週末比90円安(0.41%)の6週続落となった。レンジは2万1861~2万3103円で値幅は1442円となった。3月30日週以来10週間ぶりの大きさとなった前週の1635円に近く、値動きの大きさを表している。

なお6月16日に日本銀行は政策金利を従来の0.75%程度から1.0%程度へ引き上げることを決定した。しかし、前述のようにFOMCにて利上げ方向への転換が示されたことから、為替市場では円高要因とならず、米ドル/円相場は6月18日に一時161.82円(FactSet)と、2024年7月以来約2年ぶりの安値水準となった。この円安方向への動きは国内金価格にはサポート要因となっている。

今週(6月22日週)の動き:FRB利上げに過剰反応の金市場、金ETFへの大口買いの動向に注目、6月25日発表のPCE価格指数はどうなるか

原油との逆相関崩れと大口買いの動き

6月17日に米国とイランの暫定和平合意が発効し、サウジやクウェートなど主要産油国の原油生産も再開見通しとなるなど、原油安の環境は整いつつある。ホルムズ海峡の閉鎖も解除される見込みが伝わった。これまで約3ヶ月間、WTI原油とNY金は明確な逆相関(原油安=金高またはその逆)にあったが、足元では金市場の手掛かり材料としてFRBの利上げ前倒し観測が優先され、原油が下がっても金も売られる状況に転じている。FOMCに際してのウォーシュ議長発言からは、今後の政策方針はデータ次第ということになり、決め打ちは難しい。この点では前のめりに利上げを織り込む足元の金市場の状況は、過剰反応と言えるだろう。

NY金が前日比約130ドルの大幅安に見舞われた6月18日には、最大の金ETF「SPDRゴールド・シェア」に7トンを超える大規模な買いが確認されている。先物市場が下落する中でのこうした現物由来の金投資商品への資金流入は、中長期の投資家の押し目買いを示唆するものと言える。こうした動向には注目したい。

6月25日発表、5月の米個人消費支出(PCE)価格指数に注目

今週(6月22日週)の注目指標には、6月25日発表の5月の米個人消費支出(PCE)価格指数がある。ここまで米国関連指標ではインフレの高止まりを示すデータが相次いだが、PCE価格指数も前月比、前年同月比ともに伸びが加速すると予想されている。つまりタカ派化したFOMCの姿勢を裏付けることになりそうだ。そこで改めてNY金が売り直されるかが問題だが、水準が切り下がった後だけに影響は限定的と思われる。

テクニカル的には4,000ドル割れが節目だが、引き続き中長期的視点で、現在の安値水準は国内外ともに買い場と判断している。